19 モニター監視業務

 次の日曜日、ひかるは成瀬と一緒に羽田空港へ行った。といっても、新婚旅行ではない。成瀬が仕事をしている様子を見せてくれるというので、ついて来たのだ。


 彼は、ひかるの肩を抱きながら、スタッフスペースに顔パスで入った。二人はモニタールームのようなところへ案内され、着席すると、男のスタッフが来て成瀬に、

「今日はお連れ様もご一緒で」

と言ったので、成瀬は、

「俺の妻の、ひかるです」

と上機嫌で答えた。スタッフは固まっていた。娘だと思っていたのだろう。


 スタッフはひかるに何が飲みたいか尋ねた。成瀬はいつもコーヒーだそうで、ひかるはオレンジ・ジュースを頼んだ。


 大型モニターには、飛行機から降りてきた乗客たちが映っていたが、彼はそれを見ながら、ひょいひょいとマウス操作で特定の人物を指し示すと同時に、

「こいつの荷物を調べて」

などとマイクに向かって指示した。

 何をしてるんだろうとひかるが思っていると、

「基本的にはテロリストを捜しているんだけど、ついでにヤバいものを持ち込もうとしているヤツも、知らせているんだ」

と、彼は説明した。


「顔を見ただけで、わかるんですか?」

「うん、やましいことをしているやつは、だいたいわかるね」

 恐るべし、超能力。この前、官房長官と話していたのは、この仕事のことだったのか。でもこれなら爆弾を処理するような危険はないので、いつもこういう仕事だったらいいのにな、と彼女は思った。



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