15 ずっと一緒に

 『グレイトヒーロー』が玄関チャイムのボタンを押すと、間もなくドアが開き、ひかるが出迎えた。

「お帰りなさい」

「ただいま」

 返事をするより早く、ひかるは彼に抱きついてきた。抱きつかれたのはこれが二度目だが、前よりもぎゅっと強く抱きつかれた。見ると、ひかるは泣いていた。無事な姿を確認するまで、よほど心配していたのだろう。


 ひかるは、何か言おうとして彼の顔を見たが、何も言えず、目を閉じた。

 彼はそれを見て、思わず唇を重ねてしまった。




 ひかるは、鼻歌を歌いながらカレー鍋を持ってきた。さっきまで泣いていたのに、今は嘘のように上機嫌だ。彼はその理由を知っていたが、あえて考えないようにしていた。


「うん、おいしい。今までで一番おいしいかも」

 彼の感想に、ひかるはほっとした。実は今日のカレーは、彼女にしては自信作といえるほど出来が良かった。しかし、味オンチの彼にとっては、逆にまずいのかもしれないという不安があったのだ。

 玉子焼きも、彼はとてもおいしいと言って食べた。オムライスの時もそうだったが、彼はフワフワの玉子焼きが好きなようだったので、柔らかいだし巻き玉子にしたのが、気に入ってもらえたようだ。


 食後のお茶を湯呑みに注いで、ひかるは言った。

「私たち、これからもずっと一緒にいられますよね?」

 ん? 急で意外な問いかけに、彼はちょっと身構えた。

「ずっと一緒ってことは・・・たとえば家族のように?」

「家族ですね」

 ひかるは頷いた。


「・・・つまり親子のように?」

 ひかるは、急にふくれっ面になった。

「親子であんな風にキスしたりはしません」

 あちゃ~。やはりそう来たか・・・。

「じゃあ、・・・恋人同士とか夫婦のように?」

「そうですね」

 一転して、ひかるはニコニコ顔になった。


「でも、俺たちは親子ほど年が離れているのに・・・」

「年は関係ありませんよ」

 彼女ははっきりと言い切った。

「でも、俺たちは男女の関係にない・・・」

「これからそうなればいいじゃないですか。今晩、私を抱いてみますか?」

 彼はちょっと驚いた。

「ずいぶん大胆なことを言うんだね」

「私も自分で驚いています」

 ひかるは、ペロッと舌を出した。


「あっ、でも」と、真顔になって、「宇宙人って、セックスするんですか?」

 彼は、気まずそうに答えた。

「俺の星系ではセックスレスになっているけど、俺は地球での生活が長くなるうちに、先祖返りしたみたいだ」

 ひかるは、また笑顔になった。

「それじゃあ、今晩私で試してみませんか?」



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