10 二十年ぶりの事態

 その日の朝、それはある意味、運命の朝ともいえた。


 ひかると『グレイトヒーロー』が朝食を終えて(なんかもう、泊まっていくのが習慣になってしまっている)、彼が食器を洗って片付け、ひかるが出勤の支度をしているときだった。


 彼がこわばった顔で、キッチンから出てきて言った。

「スペース・シップから緊急信号が届いた。二十年ぶりかな、北陸でバイオビーストが発生したそうだ」

「えっ、それじゃあ、『グレイトヒーロー』さんは戦いに行くんですか?」

「うん、一刻を争う。スペース・シップに残った最後の動力で、現場に空間転送してもらう。もしかしたらだけど」

 彼は、一呼吸置いてから言った。

「俺も二十年ぶりの戦闘で、うまく始末できるかわからない。でもうまくいかなかったら、日本はおしまいだから、この命に代えても倒さなければならない」


「そんな怖ろしいことを言わないでください」ひかるは動揺した。「倒して帰ってくるって誓ってくださいよ。あなたがいなくなったら、私・・・」

もう言葉が続かない。


「悪かった」

 彼は、ひかるの肩に手を置いて言った。

「必ず倒して帰ってくる。だから、晩ご飯の準備を頼む。それじゃあ」

 彼が右手を上げると、彼の体はまるでそこにいなかったかのように、雲散霧消してしまった。


 これが『空間転送』・・・ひかるは、へたへたとその場に座り込んで、しばらくの間動けなかった。



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