11 緊急連絡

 『グレイトヒーロー』は、山岳地帯に入って通信圏外になる前に、スマホの緊急回線で内閣官房副長官補に連絡をとった。


「官房長官に伝えてほしい。二十年ぶりにバイオビーストが出た。防衛省と連絡を取って、自衛隊の出動準備をしてほしい、と」

 副長官補は、『グレイトヒーロー』とは面識があるが、所詮この職位には、『グレイトヒーロー』がテロ対策要員だということぐらいしか伝わっていない。案の定、

「自衛隊って、どういうことだ」

という返答だった。


「だから、官房長官に伝えてくれればいい。君が考えることじゃない。そうだな、今から三時間以内に俺から連絡がなければ、俺は死んだと思って、自衛隊を出動させてくれ」


 今の自衛隊の戦力で、成長したバイオビーストを倒せるのか・・・しかし今は、そんなことを考えている場合ではない。


 スペース・シップが動いていれば、オートドローンを飛ばしてバイオビーストを探索できるのだが、今は簡易なレーダーしか使えない。それでも目標のバイオビーストに、半径二百メートル以内には迫っていた。


 時間的に、バイオビーストはまだ第一次変態のはずだ。樹木を食べた跡があるはず。

 彼は、レーダー反応に気を配りながら、山道を走って行った。



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