第4話 人生初の、パーティー結成
あ、そうそう、今更だけど。攻撃は大きく分けて物理と魔法の2タイプに分類され、それらを総称して「技」という。
『スキル』や『能力』と言っても通じる。が、やっぱり「技」と呼ばれることが多いようだ。
「そうだね、これは強化の技で……一応、魔法ってことになるかな」
ちなみに物理タイプのサポート技も存在する。
舞いや詩吟でトランス状態になったり、気孔を突いてチャクラを開いたり、いわゆる達人の技に属するものだ。
僕の場合は、物理と魔法を組み合わせて、使いやすいようカスタマイズしているが。
「そんなことができるのか。
もしかしてマサルって、初心者じゃなかった…?」
急に不安になったように、サマンサが尋ねた。僕は答える。
「ううん、初心者で間違いないよ?
旅に出たのも、つい昨日のことだしね。
でもずっと、故郷の村で修行してたから」
それを聞いて、
「…! そうだったのか。実はわたしも、生まれ故郷でずっと修行していたんだ。たがら、マサルの気持ちは分かるぞ」
「ほほう? それは奇遇だね」
この世界で冒険者を希望する人々がどういう人生を送るのか、イマイチ想像がつかない。彼女の言い方からすると、普通の冒険者は修行せず、とりあえず出てみてから考えるのかもしれない。
彼女とだって、どうせこの先で別れるのだろうから、僕には関係のないことだけど――と、あえて思おうとしたのだけど、
「その、もし良かったらなんだが………」
サマンサはどこかモジモジした様子で目を伏せた。やがて、意を決したように顔を上げて、
「わ……私と一緒に、旅をしないか?」
「え? 一緒に旅?」
思いも寄らぬ提案を受けて、僕はオウム返ししてしまう。
「…い、いやなっ? イヤならいいんだ。
わたしは、攻撃魔法を極めようと思っていてな…。マサルは強化の魔法が使えるようだし、ちょうど良いんじゃないかと思っただけで……。
無理を言って、すまなかった。
ではまた、縁があったらどこかで………」
『無理………?』
まだ何も言ってないのに、答えも聞かずに背を向け、行ってしまおうとするサマンサ。
この世界に来てから、はじめてマトモに話をした相手だ。これだけで別れてしまうのは、勿体ない気がする。なので、
「わかった、いいよ」
後ろから声をかけた。
「ほ、本当か!?」
くるりと振り返った顔に、灯りがともる。
「うん。一緒に旅するって、要するにパーティーを組むってことだよね?」
「そ…そうよ? マサルは、これまでに誰かと組んだ経験は?」
「ないよ。考えたもことなかったけど、それもいいかもしれないね」
こちらの住人と、食事や買い物の時に言葉を交わすくらいのことはあったものの、それ以上の関わりを持ったことはなかった。
そもそも、現代人の僕とは価値観も異なる。
僕の方が非常識で迷惑をかけるかもしれないし、『一緒にパーティーを組む』という発想がなかったのだ。
――しかし。こうして求めてくれたのであれば、話は別だ。
強い敵が出てきても、いまの僕なら時間をかければ倒せる。だけど攻撃役がいた方が、時間短縮になるのは間違いない。
数の論理で行っても、1人より2人で攻撃した方がダメージが大きいのは当然なので。
「ただ、僕は昔から、1人で遊ぶのに慣れててね。
パーティーとかチームとかって、うまくやっていけるか見当もつかないんだけど、それでもいいかな?」
「あ…ああ! まったく問題ないぞ。そこはわたしも、似たようなものだから」
サマンサは大きく頷いた。
「ふふふ……故郷の町を背に、冒険に出て、早2ヶ月。ついに求めていたような相手と、パーティーを組むことに成功したぞ。
これが、サマンサ・タバシクルの伝説の始まりというわけだ。
世界一の魔道師として、名を馳せる日も近いな…!」
なんだか、やけに盛り上がっていた。
僕にとっても、これから永い冒険の仲間になるかもしれない相手である。問題があるとすると、それをこんな簡単に決めていいものなのか、ってことくらいか。
中高時代からヲタクとして生きてきた僕だが、最近は何が流行っているのかよく判らなくなってきており、なろう系異世界で何が起こるのか、全く予想がつかない。
それがかえって、面白いところでもあるんだけど。
伝説サポーターは、凡人だけのメンバーで最強パーティーをめざす。 さきはひ @sakiwai
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