第6話 この展開は

 授業を終えて昼休みの時間になった。

 当たり前だが、私のすぐ近くにいるのはアシェルで、結局午前中は悩みに悩んで何も解決していない状況だ。

 誰とも仲良くしてこなかったから……というより、誰にも相談できないからこそ、自分で決めるほかないのだ。


「……あのね」

「はい」

「告白の件、なんだけど」


 私がそう切り出すと、アシェルは隣に座っていたのに私の方に向き直った。

 やや話しにくくなるが――私も彼女の方に向き直る。


「正直、昨日から色々と悩んでた」

「……申し訳ないことを致しました」

「ううん、まあ……どうあれ答えはもう出てたんだけど」

「……」


 私の言葉に、アシェルは緊張した面持ちを見せる。

 昨日のそうだが、彼女の表情がこんなに変わるのは初めて見た。

 思わず笑ってしまいそうになるが、ここは笑う場面ではない。


「結論から言うと……えっと、これから色々大変だとは思うの。女性同士の付き合いって私は経験ないし、認められているわけではないじゃない? だから……」

「つまり?」


 結論から、と言いながら随分遠回しになってしまい、アシェルから問いかけられてしまった。

 ――告白に答えるというのは、こんなに恥ずかしいものか。


「お付き合いから、ってこと」

「受けていただける、と?」


 私は黙って頷いた。

 すると、アシェルは安堵した表情を浮かべ、


「……もし断られていたら、告白したことを後悔しておりました」

「断らないよ。私だって、アシェルのことは……好き、だし」


 するの、アシェルは私の手を掴んで押し倒す――


「……って、ここは学園なんだけど!?」

「人が来ることが滅多にない場所ですし、だから選んだのでは?」

「そ、そうだけど……まだ早いって言うか――んむっ」


 私が何か言う前に、アシェルは私の唇を塞ぐようにキスをして――私はそれを受け入れた。

 さすが百合エロゲ世界、展開が早い……と言いたいところだが、ここはあくまでゲームに近いだけの異世界。

 純粋にアシェルは待っていた分の気持ちをぶつけてきただけだ。

 何せ、幼い頃からずっと、という話なのだから。

 口づけを終えると、アシェルは笑みを浮かべて言う。


「明日は学園をお休みした方がよろしいかと」

「な、なんで……?」

「おそらく、疲れてそれどころではないので」


 ……この展開、間違いなくえっちなことするやつだ。

 こうして、私はメイドと付き合うことになり、異世界で新たなルートに無事突入するのだった。

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百合エロゲの世界に転生したけど、私は百合が見たいだけなので全てのルートを回避して傍観者になることにした ~なのに何故かメイドから告白されて押し倒されています~ 笹塔五郎 @sasacibe

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