うみステ!

 進戯団 夢命クラシックスさまによる舞台公演『うみねこのなく頃に』の第四弾が始まった。

『うみねこのなく頃に~Stage of the golden Witch〜』――通称つうしょう、うみステ。前々からとても楽しみにしていた私は、いそいそと配信チケットを購入して、自宅のノートパソコンで観劇かんげきした。現地におもむけなくとも、リモートで舞台公演を楽しめることが、神戸在住の人間には有り難かった。

 2次元のキャラクターを、3次元の人間が演じる――いわゆる「2.5次元」の舞台を観劇したのは、『うみねこのなく頃に』のエピソード1の公演が初めてだった。『うみねこのなく頃に』は、各エピソードごとに「同じ舞台・登場人物で、異なる連続殺人事件が展開される」という特徴を有しているため、今回観劇したエピソード4も、今までのエピソードとは異なる殺人事件が展開されている。そして、そんな事件に翻弄ほんろうされる右代宮うしろみや家の人々を熱演ねつえんしてくださった役者の皆さまから、片時も目が離せなかった。

 ミステリー要素を含む物語である『うみねこのなく頃に』は、離島りとうの洋館で起きた殺人事件に挑み続ける主人公・右代宮戦人うしろみやばとらと、全ての殺人事件は魔法で行われたと主張する魔女・ベアトリーチェによる、互いの主張のぶつけ合いが魅力みりょくの一つだ。そして、その魅力は、役を演じる人間にとっては、非常に難易度の高い試練しれんにもなることを、舞台上で繰り広げられる熾烈しれつ論戦ろんせんを聞きながら、実感した。

 戦人ばとら披露ひろうする推理が、必ずしも正鵠せいこくているとは限らない。真実を見過ごしたまま前進することで、物語に複雑な深みが増すと同時に、役者の皆さまが覚えなければならない台詞せりふの量も増えていく。頭に叩き込んだ膨大ぼうだいな言葉を、カラフルなスポットライトの下で、感情と共に声に乗せて、時には笑い、時には慟哭どうこくして、広大な客席へ届かせる。キャラクターのたましいを身体にろしているような名演が、ノートパソコンの画面という境界きょうかいなんて物ともせずに、心地よい熱気を伝えてくる。大勢の方々の努力や情熱、作品に込められた愛情に思いを馳せると、観劇を終えたとき、少し泣きそうになってしまった。

『うみねこのなく頃に』が完結してから、かなり長い月日が流れたけれど、今もこうして作品をいつくしむ機会をいただけて、とても嬉しい。そんな話を、友人――私が、うみねこ沼に引きずり込んだ友人(https://kakuyomu.jp/works/16817139558621180911/episodes/16817330661022509360)――としていたら、次回のエピソード5は、現地げんちで観劇したいねという話になった。

 WEB配信でも圧倒あっとうされた舞台のパワーを、いつかじかに浴びてみたい。私も、友人も、この手のチケットを取った経験はないから、まずは入手方法を調べるところからスタートしなければならないけれど、未来に楽しみが一つ増えた。今度は、舞台の客席で、戦人とベアトリーチェたちに会えたらいいなと思う。

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