楽しいエッセイの世界

 エッセイは、私が好んで読んでいるジャンルの一つだ。ひょっとしたら、カクヨムで一番読み込んでいるジャンルかもしれない。

 エッセイが大好きになった原点げんてんは、さくらももこ先生の『もものかんづめ』『さるのこしかけ』『たいのおかしら』で間違いない。高校生のときに、自室にこもって一人で読み、文字通りはらかかえて笑いながら、自らの体験をあんなにも面白く、かつ赤裸々せきららつづれる度胸どきょうと技術に、強い尊敬の念をいだいたことを覚えている。

 WEBでもエッセイをたくさん読むようになったきっかけは、カクヨムで素敵なエッセイと出会ったから。いくつかピックアップすると、

 柊圭介さんの『犬とオオカミの間』(https://kakuyomu.jp/works/1177354054921350547)は、静謐せいひつまされた文章を通して、フランスで過ごす日々や文化などを教えていただけた。私は訪れたことがない土地の空気が、肌に触れるようなリアリティがあり、未知みちの街歩きが既知きちのものになるような没入感ぼつにゅうかんが心地いい。時折はさまれる旅行記や食のエピソードも楽しい。

 黄間友香さんの『もっと! 同系色でまとめてみるホットケーキとちくわ』(https://kakuyomu.jp/works/16817330654928127383)は、スルメのような味わい深さのとりこになった。スルメではなくホットケーキとちくわだけれど、それはさておき、黄間さんの視点で眺める世界には、私の視界にはないものがたくさんあるように感じられて、大人になってから宝探しをしているような、わくわくした気分になる。

 夕雪えいさんの『夕雪のゆるっと読書録』(https://kakuyomu.jp/works/16818093074622791225)は、筆者のえいさんが、お好きな本について綴られた読書録。個人的に、えいさんとは好みが似ていると思っているので、読書録にまとめられた本の中には、知っているものもちらほら。えいさんのエッセイでご紹介されていた池波正太郎先生の『むかしの味』を、現在ゆっくりと半分くらいまで読み進めたところ。読み終えたら、次は江國香織先生の『やわらかなレタス』を読んでみたい。

 ちなみに、私のエッセイは、ここまで読んでくださった皆さまはご存知の通り、比較的きれいめな思い出を書いたかと思いきや、いきなり因習村いんしゅうむらについて語り出すような、混沌こんとん坩堝るつぼである。でも、小説を書くときとはアプローチが異なるけれど、自分が「好き」だと思うものを濃縮のうしゅくした言葉が、世界のどこかで誰かの楽しみになっていたら、とても嬉しい。先輩の皆さまのエッセイを振り返りながら、そんなふうに思った一日だった。

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