因習村観光地化計画
二月二十九日の午後六時、
メニューには
まかろにちゃんは、私が小説を書いていることを知っている。まかろにちゃんに限らず、高校時代の友人・知人の大半が、私が小説を書いていることを知っている。ほぼ
高校時代の友人たちも、何らかの創作を現在も楽しんでいるメンバーが多く、自作小説の話をとてもしやすい。この日、チーズの海にエビを沈ませた私は、「今ね、長編で因習村ホラミスを書いていて、もうすぐ新たな
ミステリーもので死体を発見する際に、どのような手段を用いて密室の扉をぶち破るか、という話もした。本当に、物騒な話題にも程があるが、そこで「自作のホラミスでは、村の所有物を使ったよ」と言ったことから、まかろにちゃんに「村の人たちは、どうやって生計を立てているの? 村には、どんな観光資源があるの?」と訊かれたので、私はさらさらと説明した。
「昔は
「……それだけ?」
「あとは、
「食は? 名物になるような料理はっ?」
「ないねぇ。……あっ。一応あるけど……たぶん食べないほうがいいよ……?」
まかろにちゃんは、見るからに「
「そんな状態じゃ、
かくして――連載中の因習村ホラミス長編『
「因習村といえば、いわくありげな
まかろにちゃんは、私の小説を読んでいないのに、「不気味な幼女」以外の作中の要素を、次々と見事に言い当てた。学生時代から読書家だったまかろにちゃんは、因習村を題材にした物語を、今までにたくさん読んできたのだろう。豊かな知識に
「村人の高齢化が進んでいて、観光資源も名物料理もないなら、唯一のアピールポイントである景観を売りにしたらいいと思う」
「景色の良さをアピールしても、集客に
「集客に繋げるために、漫画やアニメのコスプレOKの場所にしよう! 花と海が綺麗な場所なら、きっと『
――コスプレ! その四文字という
「そうだ、有名なVTuberに仕事を依頼しよう! 最高のロケーションでコスプレを楽しめる場所だよーって宣伝してもらおうね!」
「ぶ、ぶいちゅーばー……!」
「あとは、コスプレ用に、着替えの場所を確保しないとね」
「あっ、それなら大丈夫だよ!」
圧倒されていた私は、
「村の人たちは、
「アッ
それはすなわち、物語が始まらないことを意味する。知識を持つこと、あるいは持たないことが、物語の世界にとって何らかのトリガーとなることを、改めて教えてくれた夜だった。
最後に、私は「怖い話を書いてるけど、
「物語の進行上、たくさんの人がお亡くなりになるけど、私はうちの子をみんな愛してるから、退場者が出るたびに、とてもつらい気持ちになるね……」
ただし、それはそれとして――創作者として、別の考えも持っている。
「ミステリものにおける死体発見シーンは、重要な見せ場であるわけで。書いていてとっても楽しくて、テンションが上がる、という気持ちも、悲しみと同時に存在できるんだよね」
話を聞いてくれたまかろにちゃんは、チーズを満たした食パンという
「そうだよね。私は、因習村のことを『因習村』っていう名前のアトラクションだと思ってるよ。遊園地のお化け屋敷とか、
「それは、私もそう思う」
私の友人は、やはり因習村に関して
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