第3話『呪われた魔女の力』

 黒い雨に打たれながら、二人で雷が落ちた場所へと向かう。

 あまりに激しい雨というのもあり、おかげで街の人は皆屋内に避難していた。今外にいるのは、ぼくたち二人くらいなものだ。

 細く狭い路地を通り、最短ルートで落雷地点に向け駆け抜ける。

 あの角を曲がれば目的地だ。


「いました!」


 角の手前で立ち止まったセナが指差す方角へ視線を向ける。

 遅い足取りで周辺を徘徊する十数体の人型の魔物。紅蓮の身体と発達した筋肉。頭部の側面から生えた二本の鋭利な角は、魔人というよりも、悪魔と例えた方が近い。


「人が変異したようには思えない。本当に自然発生するなんて……」

「どうしますか? イヴ。流石に無策で突っ込むのは自殺行為ですし」

「……氷の壁で分断して、一体ずつ仕留めていこう」

解呪ディスペル対策が必要ですね」

「ちょっと無理することになるけど、解呪ディスペルされる前に削るしかないと思う」

「五秒あればいけます。旅の途中で一度戦ったので、動きは既に知っていますから」


 五秒……ほとんど無詠唱みたいな速度で魔術が飛んでくる相手に、それだけあれば事足りると豪語するセナの言葉からは、それが嘘だとは到底思えなかった。

 正直、ぼく一人であの集団を分散させるのは骨が折れる。その時間ができるだけ短縮できるなら、頼もしい限りだ。


「セナ、剣出して」


 こくりと小さく頷いて、セナが剣の切っ先をこちらに向ける。

 指先で刀身に触れて、魔力を流す。駅では対象の設定のために詠唱していたけど、集中すれば声を発する必要なんてない。


「おそらく、エンチャントは三回が限度。一回で一分持つから、三分で片付けよう」

「一体に五秒なら、十分お釣りが来る計算ですね」

「多めに見積もらないと、アクシデントで想定通りに進まなかった時が大変だからね。それじゃ、エンチャントをかけるよ」


 指先から剣全体へ魔力を流す。出来得るなら耐久限界までありったけの魔力を込めたいけど、敵の撃破にそれほど魔力は使わない。


「……よし、行きますっ!!」


 銀色の刀身が青白い輝きと、冷気を纏う。エンチャントの完了を確認し、セナは角から一気に駆け出した。


「まずは真正面!」


 セナの後に続いてぼくも飛び出し、彼女の進む道を示すように左右を氷の壁で挟む。

 目標は正面、当初の予定通り、一体ずつ片付ける。

 セナは特に小細工もなく、真正面から魔人に突っ込んでいく。

 魔人はセナに気付くと、迎撃のために右手を構える。


「遅いッ!!」


 白い閃光が駆ける。

 低い姿勢から切り上げ、構えられた悪魔の右手を切断。

 切れ味、付与した魔力、共に十分。確かな手応えを感じたセナはそのまま剣を振り下ろし、深紅の身体を真っ二つに両断する。

 まず一体目。


「次は右!!」


 新たな標的を示すため、新たに作った氷の壁でまた道を生み出す。

 こうして常に一対一を相手に強要すれば、他からの援護を警戒する必要はない。ぼくが示す敵に向け、セナは一点だけに集中すればいい。


「はぁぁぁあああああああッ!!」


 魔人が放つ黒い炎を最小限の動きで回避し、勢いを殺さないままセナは新たな敵に急接近。魔術を使って防御が疎かな胴体を横薙ぎに一閃。

 二体目。


「そこから右前方!!」

「イヴ、足元に氷を!!」


 指示を受けて、ぼくは一体の足場へ薄く固い氷を張る。

 セナは不安定なはずの足場を軽やかに滑り、速度を上げて魔術を展開される前に魔人の身体に剣を突き刺す。

 三体目。


「調子が上がってきました! 三体同時に相手します!!」


 無茶言ってくれるなぁ……。うまく三体の悪魔とセナだけを一帯から分離するように氷の壁を形成する。

 二体が魔術を展開。漆黒の火球が狭い通路を埋め尽くすように放たれるが、今更そんな攻撃はセナに通じない。

 ぼくが作った氷の壁を伝い、僅かな隙間を縫って接近。一体の頭蓋をかち割り、もう一体を拳で粉砕。背中に向けて突き出された腕を宙返りで回避。お返しだと言わんばかりに背後から逆手持ちにした剣を突き刺す。

 これで、六体目。


「次は左だよっ!!」

「了解しました!!」


 少し、魔力が減ってきた。だけどまだ大丈夫、セナのための道を作り、常に有利な一対一を。


「私の背後に壁をっ!!」


 今度は何をするつもりなんだよ。

 言われた通り背後に小さな氷の壁を生み出すと、悪魔の頭部に向けて剣を投擲。放たれた剣はギリギリで展開された敵の防壁に阻まれて届かなかったけど、ぼくの作った壁を蹴って加速し、柄頭への飛び蹴りで勢いよく剣を押し込む。

 防壁が崩壊、セナは悪魔の一体を貫いた後に剣を引き抜いて、次の敵と相対した。


「イヴ、エンチャントの準備を!!」


 セナが剣を真横に構え、横一線に振り抜いた。

 どう見たって届いていない攻撃、だけど、ぼくが付与したはずの魔力が剣と分離し、飛翔する斬撃となって二体の悪魔の首を刎ね飛ばす。

 エンチャントの途中解除と飛ぶ斬撃なんて聞いたことがない。セナは驚愕するぼくなんてお構いなしに、また三体の集団へと突っ込んでいく。

 氷壁の展開が少し遅れた。いや、セナが驚かせるのが悪いんだよ。


「イヴ!!」

「分かってるって!!」


 密集した三体の悪魔の合間を抜けて中心に飛び込んだセナは、剣を構えて右足を軸にその場で三回転。膝、胴体、首を順番に切り裂き、次の標的へと狙いを定める。

 ギリギリエンチャントが間に合った。流石に直接触れていない状態での無詠唱は負担が大きいけど、ぼくより圧倒的にセナの方が大変だから、我慢。

 これで……十二。


「ラストだ!!」


 もう壁はいらない。セナは最後の一体を見据えると石畳が割れるほどの踏み込みで駆け抜け、擦れ違い様に一閃。中核を切り裂かれた悪魔の魔人は、駅で遭遇した骨の魔人と同様に灰になって消滅した。


「……やりましたよ、イヴ!」

「うん。本当に君は……すごい奴だ」

「当然です。だって私は―――イヴっ!!」


 悪魔の集団は全て撃破した。これで一安心―――そう、思っていた。

 空中を漂う魔力が僅かに揺らぐ。次の瞬間、ぼくはセナに突き飛ばされていた。

 何が起きたのか分からなかった。振り返ると、どこからか姿を現した魔人がセナに向けて巨大な剣を振り下ろしていた。


「セナっ!!」


 まるであの日の記憶が再生されたように、赤い血が舞う。

 衝撃に吹き飛ばされたセナは、崩れかけの氷の壁に激突。

 続いて巨大な悪魔は、ぼくへと狙いを変えた。

 さっき倒したやつよりも、一回りも二回りも大きな個体だ。異様に発達した四肢の筋肉と、鋭い眼光。背中には黒い翼を持ち、その両手には二本の大剣が握られていて、明らかに今までとは違う空気を感じる。

 魔人の王ディメナ・ロード―――どうして、ここに。

 咄嗟に氷の壁を間に作り、攻撃を防ぐ。セナが吹き飛ばされるほどの衝撃だ。二本の大剣からすれば、ぼくの氷の壁なんて薄氷もいいところ。砕け散った氷が光を反射し煌びやかに輝いていた。


 なんで……? どうして……?

 疑問が、問いが、頭の中を支配する。

 確かに十三体、あれで全てだったはずだ。少なくともぼくたちがここに来た時点で、あれ以上の敵は見ていない。


隠密魔術インビジブル……」


 なら、最初から透明化していたとしたら。

 攻撃魔術も、解呪ディスペルも扱える高い知能だ。初めから透明化していて、隠れていたとしてもおかしな話じゃない。

 やられた……十三体の悪魔は囮だ。獲物を誘い込むための撒き餌、どうしてその可能性を思いつかなかったんだ。


「そうだ、セナ……っ!!」


 今残された魔力の半分を使って、氷の壁で巨大な悪魔とぼくたちを隔離する。出来る限り固く分厚く作ったから、そう簡単には打ち破れないはずだ。

 最悪の可能性が脳裏を過る中、セナのもとへ駆け寄る。

 腹部からのひどい出血、辛うじて息はしているが、すぐに治療しないとマズい。


「い、イヴ……無事、ですか……?」

「なんで、庇ったんだよ」

「わかりません……身体が、動いてました」


 治癒系の魔術は危険だ。少しでも間違えるとかえって傷が開く結果になることもあるし、何より、ぼくがそれほど得意じゃない。

 だけどやるしかない。セナを救うために、苦手でも使うしかない。


「……大丈夫です。このくらいなら、すぐに、塞がります」

「ふざけんな! こんな時に冗談言うなよ!!」

「冗談、じゃないんです」


 セナは首を振って、穏やかな笑みを浮かべた。

 温かな熱と光がセナの身体を包むと、血が止まり、傷がみるみるうちに塞がっていく。これは……治癒魔術? 違う、こんなの知らない。


「魔術じゃ、ない……」

「お母さんは、祝福であり、呪いでもあると言っていました。私、大怪我をしてもすぐに回復しちゃうんです」

「そんなこと、あるわけ……」

「部屋に置いてきたあの子の加護らしいです。だから、安心してください」


 抜くべき時以外に引き抜けないあの剣にそんな加護が……。

 でも、一先ずセナが無事で本当に良かった。


「だから、イヴは敵に集中してください。私ももう少ししたら復帰……できるのですが……」


 苦笑しながらセナが拾い上げた剣は、刀身が根本から砕けてしまっていた。

 これではまともに戦えない、使い物にならない、セナが、戦力にならない。


「イヴを庇って、攻撃をガードした時に壊れちゃったみたいで……困りました」


 魔術による攻撃手段を持たないセナにとって、近接武器の破壊は実質的な戦線離脱を意味する。となれば、あれを倒せるのは、あれと戦えるのはぼくだけ……ぼくだけだ。


「……大丈夫だよ。あ、あとは、ぼくに、任せて」


 できる限り不自然にならないように、セナを安心させるように、笑顔を取り繕って笑って見せた。

 立ち上がって、敵と相対する。最後の悪魔はぼくたちよりはるかに大きな体躯、二本の大剣、直撃すれば……死。まともに攻撃は受けられない。戦えないセナを守りながら、あれを対処するには、ぼくの持つ魔術じゃどうしても心許ない。

 魔術だと……セナを守り切れない。

 どうする? どうするどうするどうする??

 セナに剣を取ってきてもらうか? いや、透明化していた個体が目の前の一体しかいないという確信が持てない。武器のない状態でこれと相対したら、驚異的な再生能力があったとしても次こそセナの命が危ない。

 それに……あの剣が抜ける状況とも限らない。


 ふと顔を上げると、視線の先にリーナが立っていた。

 分かっている、これは幻覚だ。だけどそのおかげで、決心がついた。


「……今、ぼくにできることは」


 迷っていられる時間がない。迷っていたら、また失う。

 ぼくが作った氷の壁には、見る見るうちにヒビが入っていく。

 分かっているさ。呪われた力を、魔女の力を使うのが最適解だって分かってる。

 いやだ、いやだいやだいやだ、嫌われたくない、避けられたくない、手放したくない。だけどそれ以上に、この繋がりを、断ち切りたくない……っ!!

 鞄の中から、一冊の本を取り出す。

 決して開かないよう雁字搦めに鎖が巻き付けられているその本は、師匠曰く、魔法の書。魔女だけが使うことのできる、世界を意のままにする手段の一つ。


 ひとつ、息を吐く。

 大丈夫だ、これまでだってこうしてきた。今更使い方を間違えたりしない。


《七星の導き、悠久刻みし叡智の礎》


 本を閉じる四本の鎖、その一本が音を立てて外れる。


《星空の瞬き、編纂するは己が理》


 ぼくの詠唱に応じるように、ひとりでに鎖が外れ、封印が解かれる。


《世界を記し、言葉を紡ぎ、我が願いをここに綴る》


 身体の内側から魔力が激しく荒れ狂うのを感じる。

 右目が熱い。頭が痛い。だけどセナを守るためだ。もういっそ、どうにでもなれ。


七星の叡智セブンス・ナレッジ星紡ぐ物語マギステラ】ッ!!》


 本が開く。無数のページがぼくの手を離れ、列を形成し周囲を漂う。

 右目を隠していた前髪を掻き上げて、右手を二刀の悪魔―――魔人の王へと向ける。

 この状態なら、魔力が十分知覚できる。だから確信した、姿を消していたのはヤツだけ、あれを倒せば、一帯に出現した魔人の殲滅は完了。なら……出し惜しみはしないッ!!

 氷の壁が崩壊する。砕けた破片と共に突っ込んできた魔人が、力任せに大剣を振るう。まともに受ければ必殺の一撃、だけどもう……ぼくには届かない。

 ページの一枚が淡く輝く。魔人とぼくの間に魔力の障壁が現れて、大剣の刃が弾かれる。大丈夫、この守りを突破するだけの攻撃力はヤツにない。


星杖せいじょうの章、第三節【炎姫と氷王の邂逅グラスイグナ】ッ!!》


 右手に魔力が収束する。

 吹き荒れる吹雪の青と煌々と燃え盛る炎の赤、二つが重り肥大化。

 撃ち放たれるのは蒼焔の火球。周囲の氷壁を容易に溶かし、打ち砕く高熱と衝撃。


「吹き飛べぇぇぇええええええええええええええええ―――ッ!!」


 一瞬、眩い閃光に辺りが包まれる。

 熱波が周囲を破壊し、石畳すら融解させ、青い火炎は巨大な紅蓮の体躯を飲み込んでいく。全身が凍り付き、炎に焼き溶かされ、熱と冷気の二つを同時にぶつけることで、強固な身体を打ち砕く。

 古く、魔術は人の可能性を広げるものだと言われた。

 特定の才能を要する魔法に比べて、魔術は学びさえすれば多少の才覚の差異はあれど、誰でも扱うことができる。その代わりに、規模も威力も、魔法には到底及ばない。

 だから魔女は忌避される。魔女の魔法は人々の魔術をはるかに凌ぎ、絶大な被害をもたらすから。


 誰が見ても一目で分かる。

 これは魔法だ。ぼくが師匠から受け継いだ、ぼくだけの呪いだ。

 友達を……セナを守るために、今一度呪われた力を解き放つ。

 青く輝く火柱が、魔人の王を包み込んで天高く昇っていく。

 黒い雨を蒸発さえ、雨雲を切り裂いたそれは、灰色に閉ざされた空に一筋の青をもたらした。

 雲間から差し込む夕日が辺りを照らす。周辺に魔力反応はなし、降り続いていた黒い雨も、今の魔法で雨雲ごと吹き飛んだ。

 敵が消えたことを確認して、魔法書―――【星紡ぐ物語マギステラ】を閉じると、吹き飛んだ鎖が再び巻き付きく。

 ありがとう。恨んだことは何度もあったけど、今回ばかりは助かったよ。


「……つかれた」


 興奮で忘れられていた疲れがどっとやってきて、ぐらりと視界が揺らぐ。

 息が苦しい。身体中から汗が噴き出している。鈍い頭痛で立っているのもやっと。

 魔力切れ―――というやつだ。もう何年も経験していなかったから、すっかり忘れていた。これって、こんなにつらかったんだ。


「お疲れさまでした、イヴ」


 あまりの疲労に背中から倒れ込んだところを、セナに抱き留められた。

 恥ずかしかったし、抵抗したかったけど、身体が言うことを聞いてくれない。

 誰かの腕の中は思いの外温かくて、心が落ち着く。

 上を見ると、セナはその金色の瞳に涙を浮かべながら、穏やかに笑っている。


「……ごめん」


 何に対しての「ごめん」だったのかは、ぼくにも分からない。

 セナに何かを伝えたくて、だけど魔力切れでロクに思考の回らない頭ではうまい言葉が思いつかなくて、辛うじて絞り出したのがそれだった。


「どうして、謝るんですか」

「なんでだろう……」


 もしかするとそれは、セナに向けられたものじゃないのかもしれない。

 あの時ぼくに力があれば、勇気があれば、そんな後悔の表れだったのかもしれない。

 もしくは、騙していたことへの申し訳なさから出た言葉なのか。

 正直、自分でも分からなかった。


「……イヴ。あの力は、一体何ですか?」


 そりゃあ、気になるよね。

 めちゃくちゃ厳しいと有名な編入試験をほぼ満点で突破したくらいだ。使えなくても、セナにだってある程度の魔術の知識があるはず。ぼくが使った奇妙な力を不思議に思うのは当然だ。

 伝えてしまってもいいものか、ぼくは少し悩んでいた。

 ぼくの力の理由を話したところで、今更態度を変えないのは分かっている。セナはそんなに酷い人じゃないし、何より、ぼくが疑いたくない。


「ごめん……セナにはまだ、言えない」


 だけど……やっぱりどうしても、嫌われるのが怖い。

 不審に思うのも仕方ないけど、それでもぼくは、セナにまだぼくを知って欲しくなかった。


「わかりました! 言いづらいなら、また今度聞かせてください」

「話さなくて、いいの?」

「そりゃ気になるか気にならないかと言われれば断然気になりますが、イヴがつらそうだったから、これ以上は聞きません」


 分かっていた、予想していた通りの答えが嬉しくて、涙が溢れた。

 堪え切れない嗚咽がこぼれて、大粒の涙が頬を伝う。


「い、イヴ!? すみません! 私、何か気に障ることでも―――」

「ちがう、違うんだ、セナ。ぼくは、ズルい奴だ。君の温もりに甘えて、君の優しさが嬉しくて、それで……っ」

「なんだ。そんなことなら、いくらでも甘えてください。気持ちが治まるまで、胸くらい貸してあげますから」

「ごめん……ごめん……っ、ううっ……ぁぁああああ……っ!!」


 セナの光は、心の闇だって照らしてくれる。

 その輝きが嬉しくて、温もりを手放したくなくて、優しさに甘えて、善意に縋ってしまった。

 ぼくは最低だ。セナの性格を利用して、都合の悪い真実を隠そうとしている。

 セナもきっとそれには気付いているけど、あえて、見ないふりをしていた。

 セナの胸が涙で濡れる。ずっと、泣くこともできなかったから、溢れる涙が止まらなくて、声が掠れるまで、涙が枯れるまで、声を上げて泣き続けた。


「ありがとうございました、イヴ」


 セナの腕の中でこくり、こくりと舟を漕ぐ。

 西の空には真っ赤な夕日が沈み、空が徐々に暗くなっていく。

 頑張って起き続けようとしていた意識は、セナの静かな鈴の音のような声で限界を迎えた。

 瞼が落ちる。視界が暗くなる。身体が重い、意識が重い、もう何も考えられなくて、ぼくは眠気に身を任せて気を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君とはじめる英雄譚 ~世界を焼いた魔女の娘だけど、キミと世界を救ってもいいだろうか?~ おとうふめんたる @asahi_izumi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ