第39話公爵夫人(元婚約者)side


 フェリックス様との婚約はトントン拍子で決まり、時を置かずして結婚となりました。急かされるように結婚になったのには訳がありました。王妃様です。王太子殿下との婚約は解消しましたが、王妃様は男爵令嬢との結婚をお認めになっていません。それも当然なのですが……。私をもう一度王太子殿下と婚約させようと画策なさっているらしく、フェリックス様との結婚を妨害しようとなさっているという情報が入ってきたのです。王妃様が御実家である隣国の力を借りようとしているという不穏な情報もあり、何かが起きる前に嫁いだ方がいい、という両家の判断でした。


 結婚式も大事をとって王都ではなくコードウェル公爵領で行ったのも王妃様対策の一環でした。


 大勢の高位貴族が参列なさり、陛下も出席なさって御出でした。私は気付かなかったのですが、秘密裏に参加なさっていたそうです。まったく知りませんでした。


 

『騒ぎにならないように変装までしていたから仕方ない。表立って祝う事は困難な立場だからね』


 フェリックス様が笑いながら話してくださいました。


『王妃様の事は陛下は御存知だ。何らかの手を打つと約束してくださったから安心していい』


 どうやら結婚式で約束したようです。

 王家の思惑が何処にあるのか分かりませんが、その後、王太子殿下は男爵令嬢と結婚しました。殿下の結婚のショックで、王妃様は体調を崩され療養に入られたそうですが、あの王妃様はそれ位で寝込まれるでしょうか。些か腑に落ちませんが、これ以上の詮索は宜しくありません。世の中知らない方がいい事が沢山ありますからね。



 結婚後、王都に赴くことはなくなりました。

 友人達とも疎遠になると思っていましたが、そうはなりませんでした。皆さん、コードウェル公爵領に遊びに来てくれたり、手紙のやり取りを頻繁にしているため、王都にいた頃よりも親しくなった感じがします。


 お陰で、王都の出来事も以前と変わらず情報が入ってきます。王太子夫妻のその後も詳しく知る事ができました。王女暴行事件の顛末も……。


 



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