第21話王女の教育
妻だけでも問題だと言うのに、娘は輪をかけて問題児だ。
娘のリリアナ王女は今年七歳になるというのに王族としての心構えが出来ていない。いや、それ以前の問題だ。何しろ、王女の教育は王太子妃主導で行われている。その事にも高位貴族の間で不信感が拭えないでいるのだろう。
サリーのワガママだと思われているのかもしれないが、これを決めたのは母上だ。
私が生まれる前に両親の間である決まり事をしていた。
王女が産まれたら王妃の手で育てるという決まりだ。勿論、王女として生まれ育ち王妃として嫁いできた母上に子育てが出来る訳がない。それでも「乳母任せにはしたくない」という母上の願いだった。
王位継承権を有する者は「男児のみ」という決まりがあったためだ。
王子は乳母と教育係達に育てられる。
王妃として、また母として世継ぎにならない女児なら自分の手元で育てたいという思いがあったのだろう。嫁いで十年以上子供に恵まれなかったのだ。
これに父上も了承した。
産まれたのが王子である私だったので母上自ら育てる事はなかった。
この件はこれで終わりと思った。
それをサリーが目ざとく見つけてしまった。それまで皆忘れていた。王太子妃が「王女を育てたい」と言うなら拒否はできない。
リリアナを産んでから精神的にも落ち着いていたのも理由だった。
今、後悔している。
どうして拒否しなかったのか、と。
リリアナの教育課程は散々なものだった。礼儀作法も勉学も何もかもが王族として足りない。
サリーが
『王太子妃は王女の将来をどう考えているのか分からない』
高位貴族や王宮に出仕している者達が疑問視するのも無理ない事だ。
リリアナの相手を探すのに「お茶会」を催すのは良い。
だが、本来であれば他国の王族に嫁ぐか、国内なら侯爵以上の元に嫁ぐのが慣例ではある。もっとも今のままならその道も無理そうだ。
王族として身につけなければならないものが全く身に付いていない状態に加え、王女は酷い癇癪持ちでもあった。泣いて訴えれば母親の王太子妃が必ず味方をすると知っている。幼いうちから「どうすれば人が言う事をきくのか」と無意識に分かっているのだ。余計に質が悪い。王太子妃が味方をすれば母娘でヒステリックに喚く。何時間でも喚き続けるのだ。周囲からしたら溜まったものじゃない。黙らせるために言う通りにしている。それは皆の仕事の邪魔になるからだ。その事を生憎と母娘共々理解していない。実によく似た親子だ。
娘の性根を直すのには根気のいる作業になるだろう。
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