第19話過去16


 公務が制限された。

 私は外交公務の全ての権限を剥奪された。


 理由は重要な契約の継続を悉くダメにしたせいだ。

 賛成一致で決まったらしい。


 言い訳になるが言わせて欲しい。

 アレはないだろう?

 契約の全てがセーラが結んできたものだ。

 私がやるべきではないだろう?と抗議したら「先方からの依頼です」の一言で片づけられたんだ。

 

 セーラは特に外交に力を注いでいた。

 だから、という訳ではないがセーラ関係の書簡は意外に多い。ただ単に契約するだけでなく、季節の挨拶なども欠かさなかった。彼女は私が思っていた以上に国際的な知名度が高かった。彼女の評判は遠い国にも伝わっていた程だ。セーラが次期王妃ならば、と思って契約した国も多かった。そんな彼女がいきなり王太子と婚約解消したというニュースは一気に大陸中に広がった。

 

 王太子の婚約解消と新しい婚約という衝撃的なニュースと共に広がったのだ。

 

 と、本来ならそれで終わる話だった。

 

 ところが、話はそれだけでは済まなかった。

 侯爵が外交官として優秀である事は知っていた。大国の大使を歴任していた。だが、まさか世界中に友人や知己がいるとは思わなかったのだ。


 野心のある男にしたら、セーラは砂糖菓子のような存在だったのだ。セーラを手にしたら自動的に爵位と財産、そして世界中に散らばる人脈が手に入る。


 そして、それを手にしたのはフェリックス・コードウェル公爵だった。


 私との婚約解消後、セーラは直ぐに結婚した。

 今では二児の母だ。


 その事もサリーにプレッシャーを与えていた。

 私達にはまだ子供がいなかったからだ。

 こればかりは天の采配。

 どうにもならない。



 そう思っていた時にサリーが懐妊した。

 

 私は歓喜した。

 これで世継ぎが生まれればサリーの風当たりも少しは良くなる。

 

 生まれてくる子供。

 その子は男児でなければならない。

 女性の「爵位継承」が法律で認められても「王位継承」は認められていない。


 サリーには何としても男の子を生んでもらわないといけなかった。



 数ヶ月後、生まれたのは女児。

 王女が誕生した。



 


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