第12話 舞い降りたのは、黒い翼

 空から降り注ぐ陽光が眩しい。照り返してくる熱で体温が上がり、額から汗が零れてくる。

 ローブの裾で額をぬぐい、「うげぇ」と声を漏らす。


 すると、隣に立つアリスが、俺のだらしない態度を咎めて来た。


「しゃんとしなさい、フェイト」

「分かってるよ」


 目を合わさずそう答えると、アリスはむすっとした表情になる。

「学院の生徒として相応しい立ち居振る舞いをしてください」


 そう言うアリスは、どういうわけか汗一つかかずその場に立っている。


「まして、私たちは今、学院の代表としてその姿を国民に見られているのですよ」

「だったら氷菓の一つでも差し入れてくれると嬉しいいんだけどな」


 俺の冗談に、珍しくアリスが「ぷっ」と噴き出したが、すぐに涼しい表情に戻る。


「くだらないことを言ってないで、集中してください」

「へいへ~い」


 しぶしぶ俺は姿勢を正し、長ったらしい学院理事長の言葉に耳を傾ける。


 魔術師としての誇りがどうたら……、国民に雄姿を見せろだのなんだの……。全く興味の無いご高説を垂れるので、暑さと相まって頭がやられそうだ。


 おまけに眠い。

 欠伸が出そうになるが、隣のアリスの眼光にさされ何とか我慢した。


 俺は眠気覚ましに、開会式が開かれている闘技場に集まった面子を見渡した。

 全十六チーム。総勢四十七名の学院の生徒がそこにはいた。


 メンバーの上限は各チーム三人なので、俺とエレノア以外のチームは上限の三人でチームを組んでいる。


 顔ぶれとしては三、四年生といった上級生が多く、二年生は比較的少ない。

 学年を跨いでチームを組んでいる生徒も多いのでチームごとの学年の編成は何とも言えないが、少なくともその中に一年生の生徒がいるチームは俺たちとアリスのところくらいだろう。


「注目されていますね」

 先程からチラチラと様子を見られていることに気付いたアリスがそんなことを言ってくる。


「そりゃ一年で去年の優勝チームを蹴散らした激強お姫様がいるからな。無理もない」

「私は貴方のことを言っているのですよ?」

「俺だぁ?」

「ええ。一年、それも二人で本戦に出場なんて学院史上初でしょうから。きっと警戒されていますよ」


 確かに開会式が始まってから、というより俺とエレノアの本戦出場が決定した時から注目されている感覚はあったが。


「そいつは買いかぶりだぜ。皆が注目してるのは、去年の優勝チーム相手に俺たち二人がどうやられるかだ。俺たちが警戒に値するなんて微塵も思っちゃいねぇよ」

「まぁ、エレノアに頼りきりですからね。貴方は」

 冗談めかしてアリスが言う。


「そう立ち回って来たからな」

 俺は腰に吊るした歯車の剣にそっと手を置き、アリスにだけ聞こえる音量で言った。


「では、これからは違うと?」


 俺はアリスのその問いに、ニヤリと顔を歪め。

「まあな」

 と答えた。


「楽しみです」


 それだけ言うと、アリスは未だ長々と話を続ける理事長に向き直った。


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「えぇい! クソったれがぁぁ!?」

 右手で眼前に結界を張り、迫りくる魔法の連射を防ぎながら俺はそんな声を上げた。


 とうとう始まった決闘トーナメント本戦一回戦第三試合。俺とエレノアは絶賛大ピンチ中だった。


「まだかエレノア!?」

「もうちょっとだ! いいから黙って結界を維持してろ! そら、ヒビが入ってるぞ」

 俺の後ろでは、エレノアが原典を開いて悪魔を召喚しようとしている。


 俺たちの一回戦の対戦相手は昨年度の優勝チーム。三人とも三年生で、アリスが居なければ学院最強チームの称号は彼女たちの物だっただろうと言われている強敵だ。

 特にリーダーの女子生徒、リーリャ・エルーガは既に王国魔術師団からの推薦が来ているという。三人が続けざまに放つ魔法の威力はリーリャが桁外れだ。


 三人とも、数ヶ月前に負けたアリスへのリベンジに燃えているのだろう。


 ドォン、ドォン、ドォン。


 一発着弾する度に、俺が張った結界が軋み、そこら中に亀裂が生まれる。結界のダメージを修復することに全神経を注いでいるので何とかなっているが、僅かでも集中が途切れればたちまちやられてしまう。


「良いぞ、フェイト!」


 エレノアがそう言うと同時、俺は結界を解除し、すぐに魔法の着弾範囲から横っ飛びに逃れた。


 リーリャたちが放った魔法が盛大に地面を抉り、俺が捲れ上がっ土を頭からからかぶっているうちに、エレノアが召喚した牛の頭と筋骨隆々の人間の体の悪魔は猛スピードで三人に突っ込んでいく。


 勿論リーリャたちは迎撃のために魔法を放つのだが、牛頭の悪魔の強靭な肉体に弾かれてしまう。


「チッ、小癪な!」

 そう言うと、リーリャはチームメイトの二人の後ろに下がる。


 何かするつもりだろう。俺は腰のベルトから拳銃を引き抜き、三人に向けて構える。


 魔法で強化した動体視力でもってしても、放たれた銃弾の動きを捉えることは至難の業だ。避けるなど不可能と言ってもいいだろう。

 しかし、銃口の向きや俺が引き金を引くタイミングから軌道を予測し、弾が放たれる前に移動することで避けるのは可能だ。


 実際、三人は銃弾の軌道からそれるように


「なッ!?」

「こ、これは……!?」


 かかった!


 三人の足に、突然地面から這い出た蛇が絡まり、その動きを妨害していた。

 三匹の蛇は、俺がこの試合中にこっそりと仕込んでいたものだ。


 いつの間にこんなものを仕掛けたんだ。なんで気付かなかったのだろう。そう彼女たちは思っているはずだ。

 だがそれも仕方がない。俺が仕掛けた蛇が、エレノアの召喚した悪魔や、あらかじめ契約した魔法生物の類であれば彼女たちは気付いたはずだ。戦いながらも闘技場全体を魔法で警戒することくらい造作もないだろう。


 だが彼女たちの足に絡みつく三匹の蛇は、王都でペット用として売られているごくごく普通の蛇だ。調教するのにかなりの時間が必要だったが、魔法の痕跡が一切ないためリーリャたちでさえ気付くことができなかった。


 直ぐに三人は絡みつく蛇を振り払うが、既に弾丸は放たれている。今更回避は間に合わない。


 銃弾の狙いは勿論リーリャだ。彼女さえ倒せば、残りの二人はどうとでもなるだろうという自信が俺にはあった。

 赤い炎の尾を引いて走る銃弾は、リーリャたちに突進する牛頭の悪魔を追い抜き、三人に向かう。

 その銃弾に込められた威力は、これまで戦ってきた予選リーグよりも高い。予選リーグでは安全を考慮して魔法や火器の威力には制限がかけられるが、決勝トーナメントではそれが緩くなるのがこの学院の慣習だ。

 勿論制限がなくなるわけではないので当たったところで死ぬことはないが、戦闘不能になるくらいの大怪我はするだろう。


 半端な魔法結界なら余裕で貫く威力を持った銃弾は、しかしリーリャのチームメイトの一人である短髪の長身女子生徒の魔法によって防がれた。

 地面に手を付くと、突然三人と俺たちを遮るように地面が隆起したのだ。


 大量の魔力を込めてできた土壁は、俺が放った銃弾を受け止める。


 だが、その一手は悪手だ。


「グハッ!?」


 俺の銃弾を魔法によって防いだ女子生徒のうめき声が響き、その身体が宙を舞った。


 銃弾を受け止めた壁を軽々と吹き飛ばした牛頭の悪魔が、その勢いのまま肩をぶつけるようにしてタックルしたのだ。


 普通ならこんな分かりきったタックルは喰らわないだろう。だが、彼女は自分が魔法で作り出した土の壁で悪魔の姿を捉えることができなくなっていた。

 意識外からの攻撃をもろにもらったのだ。


「フォルナ!」

 もう一人のチームメイトの女子が吹っ飛ばされた心配そうな声を出す。しかし、流石は昨年度の優勝チーム。すぐに冷静さを取り戻すと、再びタックルを仕掛けようと構える悪魔に対して迎撃の構えを取る。


 それとほぼ同時、試合を見ていた観客たちから一斉にブーイングが飛んでくる。どいつもこいつも、正々堂々がどうだの魔術師の誇りがどうだの、うるさいもんだ。


 そんなことを思いながら、俺は無言でエレノアに目配せした。


 目が合うと、エレノアはこくりと頷く。エレノアは分かっていた。

 先程悪魔のタックルを受けたフォルナは意識こそあるがすぐに起き上がれる状況ではないこと。そして、彼女たちが冷静を装っているだけで本当はまだ動揺していることを。


 リーリャたち三人にとって、俺とエレノアは本来なら取るに足らない相手のはずだ。単純な力量差なら、油断をしていても勝てる勝負なのだ。


 リーリャたちの誤算は三つ。初手の魔法合戦で俺たちを倒せなかったこと。魔法生物でもないただの動物である蛇を俺が使ってきたこと。そして、まさか自分たちの仲間が先にやられることになったこと。


「行くぞ。援護しろ、エレノア!」

「ああ、フェイト!」


 俺はそう言うと、牛頭の悪魔と共に突撃する。リーリャは未だチームメイトの後ろで待機している。

 彼女から大量の魔力が漏れ出ている。何か強力な魔法を放つつもりだろう。


 残ったチームメイト、長髪の女子生徒が俺に魔法を連射してくるが、牛頭の悪魔を盾にして突貫する。


 彼我の距離が後少しといったところで、遂にリーリャが動いた。


 彼女が俺に向けた右手に、神々しい光が宿る。

 彼女の顔の隣には、原典のページが開かれていた。


 リーリャが何をしようとしているのかは分からない。だが、あれを喰らったらただでは済まないことくらいは直感で分かった。


 本能が叫んでいる。今すぐ逃げ出せと。


 俺は突撃を止め、リーリャの右手の延長線上からズレようとするが、後ろから叫んだエレノアに止められる。


「止まるな、フェイト! 私が何とかする!」


 ほんの一瞬後ろを見ると、エレノアが原典を開き魔法を使おうとしていた。


 信じるしかない。エレノアが攻撃を防ぎ、俺がリーリャの下までたどり着けると。


 どちらにせよ、このタイミングが俺たちの最初で最後のチャンスだろう。もうじき吹き飛ばされたフォルナも回復して戻って来る。


 ここで決めるしか勝機はない。


「まかせたぜ、相棒!」


 そう言って、俺は再び走り出した。


「行かせると思う? フェイト・レイノーン」


 俺の目の前に立ちはだかる短髪の女子生徒。だが、俺は左右にフェイントをかけて彼女を抜き去る。


「……行かせない!」

 振り返って魔法を放とうとするが、牛頭の悪魔がその剛腕を何の技も術理もなく振り回したことで中断をせざるをえない。


 紙一重で躱し、至近距離から雷撃を叩きこむが。


「なんて、硬いの……!」


 バチッ! という音が鳴るだけで、悪魔は平然としている。


「ごめん、リーリャ。そっち行った!」

「問題ない。アンタはその悪魔の相手をして」


 右手を突き出しながら、リーリャは言った。

「こっちは私が倒す」


 リーリャの右手に溜め込まれた光が、とうとう解放されようとしている。

 まだ放たれていないのに、肌がピリつく。


「ここまでよ、フェイト・レイノーン」

「やってみろ、先輩!」

「生意気な後輩ね!」


 それだけ言うと、遂に右手の光が解き放たれた。


 光の束は、少しのブレも無く俺に直進してくる。もはや回避など到底間に合わない。なら、後はエレノアに託すしかない。


 眼前に光の束が迫って来る。それが俺を呑み込む直前、一体の悪魔が俺の目の前に召喚された。


 白い仮面に、黒いシルクハットとマント。杖を携えたその悪魔は、まるでマジシャンの様な格好をしていた。


「ふっ、我が主はなかなかに鬼畜だな。数年ぶりに召喚されたかと思えば、浄化の光とは……」


 表情は見えないが、その声はどことなく楽しそうだ。


「黙って仕事しろ、ガルラ」

「仰せのままに。我が主」


 ガルラと呼ばれた悪魔がシルクハットを脱ぎ、それを直進してくる光に向ける。


 すると、圧倒的な力を以ていた光がどういうわけかその中に吸収されていった。


 光がすべて呑み込まれると、ガルラは再びシルクハットを頭に被った。


「では、また会おう。少年少女よ」


 それだけ言うと、マントを翻し、それに隠れるようにして姿を消した。


 何が起きているのか分からなかった。ガルラは浄化の光と言っていた。リーリャが放ったのは、神話の時代、神が呪いによって汚染された地上を浄化するために天から放った光。それを起源にした魔法なのだろう。


 だが、だとしたらそれを悪魔が対処できているのがおかしい。悪魔にとってその類の力は天敵のはずだ。


 いや、今はそんなことはどうでもいい。


 俺はすぐに思考を切り替えて、目の前の現象に驚いているリーリャに接近する。リーリャもすぐに冷静になり、俺の一手目に対して完璧な対応をしようと構える。


 じりじりと、俺とリーリャは互いに自分に有利な間合いを取り合う。


 その間、リーリャの目が絶え間なく動く。俺の動きを警戒しているのだ。油断があった先程までとは違う。本気の表情だ。


 アリスのチームを除けば間違いなく優勝候補。そんなチームのリーダーの本気は、きっと他の生徒なら身体が竦んでいただろう。


 だが、俺はいたって冷静でいた。俺には彼女の考えていることが手に取るように分かるからだ。


 きっと、彼女の頭はの中はこんなことで一杯だろう。

 次はどんな手を。否、どんな卑怯な手を使ってくるだろうか。ベルトに挟んだ銃? 大量の虫の悪魔? いや、先程の様に動物を使ってくるだろうか。


 リーリャは俺の一挙手一投足を決して見逃さまいと観察する。


 そして、その様子を見て俺は確信する。


 勝った。


 確かに、リーリャは強い。俺が百年、千年と鍛錬を重ねても届かないだろう。それは原典が白紙だからだけではない。魔術師としての素養で、俺は彼女に到底及ばない。まともに正面切って戦えば一瞬で倒されるだろう。


 そして、そのことは彼女も理解している。もはや先程までの様な手は通用しないだろう。俺の下劣技も絡め手も、彼女はしっかりと警戒している。


 だが、それでも尚、俺は勝利を確信していた。


 なぜなら、彼女が警戒していない、視線が唯一留まらない場所にこそ、俺の切り札はあるからだ。


 なぜなら、それは一度この闘技場でアリス相手に試みそして失敗しているから。彼女にとって正面切ってのタイマン勝負は最も勝率が高いから。


 だからこそ、俺はそこに勝機を見出した。


 抜き手も見せず、腰に吊るした歯車の剣を抜いた。


 瞬時に魔力を熾し、それを歯車に流し込むことで増幅する。


 あらかじめ繋いだ回路パスを通じて、増幅した魔力が俺に帰って来る。体中が焼けるような苦痛にさいなまれるが、無視して剣を振りかぶった。


 僅かに、リーリャの反応が遅れたことを俺は見逃さなかった。


 上段から振り下ろした俺の歯車の剣と、リーリャが張った魔法結界が衝突し、衝撃はが起きる。


「くぅぅぅ!」


 リーリャが苦しそうな声を上げる。慌てて張ったため結界は強度が足りず、俺の剣戟が予想以上の威力であったため、結界を維持するのに必死なのだ。


「行け、フェイト!」


 後ろから、エレノアの声が聞こえてくる。


 これが最初で最後のチャンス。そう思い、俺はもう一度剣を上段から叩きつけた。


 ピキピキと、リーリャを守る結界にヒビが走っていく。

 もうあと少し。三度剣を振るう。


 その時、ガラスが盛大に割れた様な闘技場に響いた。


 恐らく、観客の多くは俺が結界を破壊したと勘違いしただろう。だが、俺の剣を阻む結界は未だ残っている。


 なら、今のは一体何なのだろう。


 俺は剣を握る力を少しも緩めないまま、エレノアの方を見る。だが、彼女も今の音が何かよくわかっていないようだ。


 長髪の女子生徒は相変わらず牛頭の悪魔の異常な頑強さに苦戦していた。


 フォルナはようやく膝に手を付いて立ち上がろうとしているところだ。


 ふと、俺の視界にあり得ないものが映った。


 本来結界で外からの侵入を防いでいる闘技場の空から、一人の少女が降りて来たのだあ。


 腰まで届く、くすんだ長い金髪。血の様に真っ赤な瞳。きめ細かな肌を白いワンピースで包んだ、幼い少女だ。年のころは十二、三歳といったところだろうか。


 どこぞのお姫様にも引けを取らない美しさに、俺たちは見惚れていた。


 だが、すぐに少女の異常性に全員が気付いた。


 なぜただの少女が、こんな危険な場所に突如として現れたのだろう。


 なぜ俺たちは、ただの少女が放つ圧力に飲み込まれているのだろう。


 そして何より。先程の音は、闘技場に張られていた結界が破られた音なのではないのか。


 それを理解した瞬間、俺たちは一斉に魔法を放った。もはや試合どころではない。


 骨すら炭にしかねないほどの灼熱の大玉が宙を舞う。人体を割く風が狂喜乱舞する。天から極太の雷が降り注ぐ。地獄から這い出た魑魅魍魎が列をなして押しかかる。


 俺も、腰から引き抜いた銃を連射する。試合前にかけられた威力を制限する魔法は取っ払っている。当たれば死ぬ威力だ。


 だが、俺たちの攻撃が実を結ぶことはなかった。


「冗談だろ……」


 俺たちの攻撃はすべて命中した。


 だが、少女の肌に傷一つ付けることができなかった。


 突如、少女の背中から黒い翼が出現した。

 否、それは果たして翼と言えるものなのか。


 それはまるで、黒い針金を網目状に絡めたようだった。


 黒い翼が、一気に展開する。


 俺は後ろに飛んで何とか躱す。先程まで俺が立っていた場所に、少女から生えている翼の一部が深々と突き刺さっている。


 近くにいたリーリャは魔法で撃ち落としたようだ。だが、他の三人は?


 リーリャのチームメイト二人は身体を串刺しにされ、その場に倒れている。


 そして、エレノアと言えば。


「くっ!」


 先程召喚した牛頭の悪魔が黒い翼を受け止めている。しかし、その力を遥かに上回る力で黒い翼が悪魔の身体を貫き、その背後にいるエレノアを狙った。


 考えるよりも早く、身体が動いた。


 歯車の剣によって増幅した魔力を一気に身体能力強化の魔法に注ぎ、黒い翼がエレノアを襲うよりも早く動き、エレノアの身体を横から突き飛ばした。


 寸前のところで、エレノアは黒い翼の攻撃範囲から逃れる。


 俺も急いでそこから脱出しようとするが、一歩遅かった。


「ガハッ!」


 黒い翼が、俺の身体を貫き、そのまま闘技場の端へと引きずっていた。

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