第8話こねてこねられて



 美味しいご飯でメンタルを回復させ早速冒険者ギルドに向かう。


 枯れたキラープラントの地下茎はどれくらいもらえるのだろうか…。作戦現場では見渡す限り地下茎が落ちているというような状態だったが…。


「こんにちは、キラープラントの駆逐依頼の報酬を受け取りにきました。」


「お待ちしておりました、こちらへどうぞ。」


 受付のお嬢さんに連れられ冒険者ギルド裏の倉庫へ向かう。


 倉庫に入って最初に目に入ったのは山のように積み重ねられたキラープラントの地下茎だった。

 す、すごい量だ…。こんな量初めて見た。


「こちらがユーリさまの分配となります。アイテムバッグはお持ちでしょうか?

 お持ちでなければ有料となりますがギルドの保存庫で保管させていただきます。」


 これが!全部!俺の?!

 これからみんなに分配をするのかと思っていたけどそうではないようだ…。


 分配人数が少なかったのかもしれないが、今回の駆逐作戦で獲得したキラープラントの地下茎はこの山の10倍はあったらしい。


 正直、こんなにいらないな…と思ってしまう。

 だって本当に多いんだもん。

 4分の1くらいは師匠に送ってもらうことにし残りの4分の1は自分のアイテムバッグに、さらに残りは生産ギルドに売ってしまうことにした。


 キラープラントの地下茎はいろいろな魔法薬に利用できるが俺の店舗で生産して販売するには限度がある。

 なので売ってしまう方が懐もあったかくなって良いのだ。



 肝心の依頼報酬自体は元の金貨10枚に上乗せされ全部で金貨50枚!日本円でおよそ500万の大金だ。


 数日でこんなにお金を稼いだのは初めてだ…。

 俺がこんなにもらってもいいのかな、「赤の手」を発動してただけだったんだけど…。


 まぁ、貰えるものは悪口と借金以外は貰うのだが…。

 よくよく聞いてみると今回の依頼を受けていた「赤の手」の使い手が俺とあともう1人だけだったらしい。そのおかげか上乗せ金額が多くなったようだ。


 生産ギルドにキラープラントの地下茎を売りに行きついでにギルド銀行に大金を預けておく。


 ギルド銀行は国を超えて所属ギルドのメンバーカードを用いてお金の出入ができる便利な仕組みだ。

 これも「地球」出身の人が作った仕組みなんだろうか?




 なんやかんやと街を行ったり来たりしていると時刻はお昼になるころ。

 そろそろお腹が空いて来たのでお昼にする。


 せっかく大金が入って来たのでいつもは入らないようなレストランに入りたい。


 貴族が行くようなところほどではないがお金持ちな庶民が行くところをギルドで聞き向かう。


 おすすめされた場所はレストランと言うよりもカフェに近いところでとても雰囲気がいい。


 表通りから少し路地に入った場所に立っているので隠れ家感も満載なお店だ。

 赤い洋瓦に白い漆喰の壁。


「ドアノブが猫の顔だ!」


 そんなドアノブを握り店に入ると目に飛び込んできたのはたくさんのネコ。


 も、もしやここは…


「ネコ喫茶肉球の香りへようこそいらっしゃいました。おひとりさまですかな?」


 出迎えてくれたのは猫耳カチューシャ装着のナイスミドル…。

 情報量が多い!何もわからない!


「はい、1人です。」


「ではこちらへどうぞ。」


 そうして案内されたのは猫が団子のように固まって座っている場所。特等席だ!


 ネコにぎゅうぎゅうされながらメニューを開いて注文をする。


 頼んだのは「猫ちゃんオムライスセット」


 お米を使った料理が食べられる店は珍しいのですかさず頼む。


 料理が出てくるまではネコをひたすらこねこね、こねこね。

 ここがいいのか?ここがいいんだろう!


「なかなか、良い手際ですな。私もこねられたいほどです。」


 オムライスセットを持って来てくれた先ほどのネコミミ紳士がなんか寝ぼけたことを言っているのをスルーしつつ、いただきます!


 オムライスは猫の形になっている、顔も描かれていてとてもかわいい。


「美味しい!」


「ふふっ、ネコの食べちゃいたいかわいさを表現いたしました一品です。食べちゃいたいでしょう?」


「え、えっとおいしいです!」


 ネコミミ紳士はともかく料理はとても美味しいのでまた来たいところだ。


 ネコたちも人に慣れているのか心置きなく吸わせてくれるしこねさせてくれる。


「もうすっかりネコの虜、、下僕ですな。またいらして下さい!ネコごねのお人よ。」


 なぜ言い直したのかは聞かず「また来る」と返事をする。

 まぁ実際にネコの前では誰でも下僕になってしまうのは確か。


 ネコミミ紳士にネコごねの技術を称賛されることにも喜びを覚え出したところでそろそろ帰らなければならない。


 まとわりついてくるネコたちとの別れを惜しみながら出口まで向かう…。

 離れたくないよな…俺もだよネコたち!


 出口で再度ネコたちの方を振り向いた時にはどのネコも新たな客のもとでこねられており誰も俺の方を見てすらなかったのは内緒だ。


 こんな冷たいところもまたネコの魅力なんだよなぁ。

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