第7話心のお食事


以上な空腹感で目が覚めたら夜だった。朝に帰ってきたので丸1日ずっと寝ていたようだ。


「うーん、まだ寝足りない気もするするけど、これ以上寝ると逆にしんどくなっちゃうかも。」


時刻は大体午後8時になるころ。

ご飯を作る気力もないが何かお腹に入れないと動くことすらままならなくなってしまう。

一人暮らしの辛いところはこういうところだ。


「師匠の作ったおじやが食べたい…。」


お出汁がしっかりとしている卵おじや。

鍋をした後や風邪をひいた時、なんだか心が落ち込んでいるときに師匠が作ってくれたものだ。


寝起きからこんなにも気分が落ち込んでいるのは久しぶりかもしれない。

独り立ちするのは早かったんじゃないか、とか師匠のところに戻りたいだとかいろいろネガティブな感情が湧き出てくる。


これも全部空腹のせい!

気分が落ち込むのも元気が出ないのも!師匠に会いたいのは空腹のせいじゃないけど。


「おにぎりまだ残ってるかな?」


キラープラントの駆逐作戦へ持っていったアイテムバックをあさりおにぎりを探す。

アイテムバックの大部分を占めていた魔法薬るいあは怪我人が多く現地でほぼ全て使ってしまった。

これのお金もギルドが出してくれるそうなので思う存分使うことができたのだ。


スカスカになったアイテムバックからはすぐに残りのおにぎりが見つかる。



「お出汁でお茶漬けにしよう…。」


一度おじやを思い出すとすっかり口がおじやを求めてしまう。

お椀を出してきておにぎりを1つ入れたらその上から熱々のお出汁をかけたら完成。


手抜きだが美味しいのでいいのだ。


「あ、鶏そぼろだ!」


お出汁の中でおにぎりを崩し混ぜる、中身は鶏そぼろだった。美味しい!


梅干しおにぎりは緑茶をかけて食べたいので次のおにぎりからは割ってからお出汁をかけるようにしよう。


ご飯を食べているとどんどん元気がわいてきていつもの自分に戻ってきたような気分になる。


空腹は最大の敵なんだよな!


「よし!次はお風呂だ!」



意気込んでお風呂に入ったものの汗や泥で固まった髪があまりにも手強く上がった頃にはどっと疲れてしまった。


あれだけ寝たのにすでに眠い、でも今日はもう夜なので寝てしまおう…。


「ベッドがドロドロなんだった…。」


疲れて倒れ込んだベッドはとてもじゃないが綺麗な体で入る気にならない状態だったので仕方なくソファーに転がる。


すぐに重くなる瞼の裏でカーペットがモコモコだったら床でも寝れるだろうか、とかハンモック欲しいな、なんて考えてた。




そんな大変な夜を超え朝は家のベルが鳴る音で目が覚めた。

店舗の方ではなく家の方のベルが鳴るのは珍しい。


寝ぼけたままドアを開けると立っていたのはキラープラント駆逐作戦のとき護衛をしてくれていた冒険者のベイルさんだった。


「ようユーリ、寝起きか?」


「はい、そうです。ベルの音で目が覚めて…おはようございます。」


「そりゃすまねぇことをしたなお前がなかなか冒険者ギルドにこねぇってんで生きてるか確認しにきたんだ。元気そうなら良かったぜ。」


「あ、すいません…。今日には伺おうと思ってました。昨日家に連れ帰ってもらった後夜まで寝てしまいまして…。枯れたキラープラントの地下茎を分配する件ですよね?」


「あぁ、その件なんだが…。ユーリ、今日がいつかわかってるか?俺がお前を連れ帰ったのは一昨日の話だぜ。そんだけ疲れが出てだってことだよな。無理させて悪かったな。」


「お、一昨日ですか?!俺、すごい長時間熟睡していたみたいです…。」


朝帰って来て夜まで寝ていたんじゃなくて、朝帰って来て次の日の朝を超えて夜まで寝ていたのか…。


1日半も寝ていたらお腹も空くはずだ。

あの時の異様な空腹感の謎が解けた気分。


「まぁ、そういうことだから時間があるときに来るよう冒険者ギルドからの伝言な。あんまり無理すんなよ!休憩は大事だからな。」


「はい!わざわざ家までありがとうございました。」


いいってことよ、と手を挙げてベイルさんは帰っていった。

同じように駆逐作戦に参加していたがベイルさんはピンピンしていたな。

口ぶり的に昨日もいつも通り冒険者ギルドに行っていたようだし…。


依頼に慣れたら俺もああなれるのか?

俺もかっこよく「いいってことよ」したい!


「朝ご飯を食べたら冒険者ギルドに行かないとな!」


一級魔力回復薬の材料だ!高級品だ!

大変なことの後には楽しいことが待っているとはまさにこのことだ。


今朝はまだ胃がびっくりしてしまうので優しいものを食べようと思う。

駆逐作戦前にドライフルーツをたくさん買ったのでそれをヨーグルトにかけよう。


さらに上からハチミツもかける!


冷たいヨーグルトの上にハチミツをかけると水飴のように固まる。

口に入れた瞬間ハチミツが溶けるとヨーグルトの酸っぱさと合わさり最高なのだ。


レーズンの甘さもヨーグルトによく合う。


ヨーグルトだけでは昼まで持たないので食パンを少し厚めに切りバターを塗って食べる。


普段は目玉焼きだったりベーコンだったりと色々な具材をのせるが今日はシンプルにバターを塗るだけ。


体力的な疲れと精神的な疲れが残ってしまっているが朝食で気分を切り替え一番の楽しみを冒険者ギルドに取りに行くぞ!


「お昼は久しぶりにギルドで食べよう!そうしよう。」


今日も俺の生活は食を中心にまわっていくのだ。

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