第6話キラープラント駆逐作戦
夕方になり冒険者ギルドから冒険者のベイルさんという方が使いとして呼びにきたので一緒に森へ向かう。
この間にも道の途中には怪我をして引き返していく冒険者がたくさんいる。
この人数の冒険者が引き返していくのを見るとキラープラントの規模の大きさが想像できる。
俺が呼ばれたってことはある程度地上部は排除されたということだろう。
アイテムバッグにたくさんの魔法薬を持って現場へ向かう。
「これは…すごいな…。」
「まだ地上部を全て排除できたわけではねぇんだが地下茎を除かねぇと拉致があかねぇからな。早速頼むぜ!」
現場は見渡す限り排除されたキラープラント、キラープラント…、という感じでその奥にまだ戦っている冒険者が多くいる。
俺ではツルに捕まるとひとたまりもないので地上部が残っているところには近づかないようにしないと!
家に呼びにきてくれたベイルさんがこのまま護衛としてついてきてくれるのがとても心強い。
「じゃあ地魔法で掘り起こすので「赤の手」をお願いします。」
現地で合流した地属性の魔法使いがキラープラントを掘り起こすのに合わせて魔法を使う。
「はい!「赤の手」」
俺がやること自体は簡単で掘り起こされたキラープラントの根を掴み魔法を発動させるだけ。
「赤の手」は植物の一部に手を当てることで発動することができるため、掘り起こされた根の一部を掴むだけでいいのだ。
「結構地下茎を伸ばしていますね、地下茎も一本ではないです。」
俺の「赤の手」はまだ発展途上であまりにも長い根だと全て枯らしきることが一回ではできない。
魔力回復薬をガブガブ飲み地道に枯らしていくしかない。
「この根は終了です!」
掴んでいた根を完全に枯らし切るとボロボロになった根を地魔法で掘り起こす、という作業を繰り返す。
キラープラントの根は枯れている状態が1番薬事効果が大きいので後から回収するためだ。
一級魔力回復薬の材料の1つなので俺も少し分けてもらいたいところ。
「「赤の手」あれ?植物の根の途中に何かあります!」
根が何かを巻き込んでいるせいか魔法の通りが悪い部分がある。
「一度掘り起こしますね。」
そう言って掘り起こされて出てきたの人の遺体と、これは魔道具か?
「わぁ…、この規模だとやっぱりありますよね…。」
「そうですね、残念ながら。人があまりこない森だったせいか対応が遅れてしまったのもあるでしょうね…。」
この世界は「日本」と比べて死が隣り合わせすぎるのだ。適応したと言うか、人の遺体をみても昔ほどの驚きがなくなってしまったのが悲しい。
「遺体は布に包んどくか、後で町に運び込むらしいからよ。っと、これは魔道具か?」
「何の魔道具でしょうか、こんなところに埋まっているなんて…。」
「あ、何か書いてますよ!術式かな…。えーっと「緑の手」?」
術式は古代語で書かれていた。
「緑の手」という解読があっていたらこの魔道具はここに置いておくと危険だろう。
しかし、「緑の手」以外にも術式が書かれている可能性があるので迂闊に触るのも危険だ。
「ユーリ、お前古代語が読めるのか!すげぇな、しっかし「緑の手」かぁ。」
「いえいえ、植物とか一部しかわからないので読めるというほどでは…」
「でもすごいですよ!今日、魔道具の術式が読めただけでもすごい収穫ですから。」
本当に少ししか古代語は読めないが褒められるのは好きなので笑顔でうなづいておく。
「ギルド長を呼びましょうか。私たちだけでは対応できませんし。」
「そうだな、俺が呼んでこよう。なるべく安全なところで待っててくれ。」
「わかりました!ありがとうございます。」
「最悪は私が囮になりますので安心してください!」
そ、それはあまりにも最悪の事態すぎる!
安全なところにいよう…。
待ってる間にも魔力回復薬をがぶがぶ飲み「赤の手」でキラープラントの地下茎を排除していく。
「すまん!待たせたなぁ、魔道具が出たんだって?」
「はい、そうなんです。こっちの遺体と一緒に出てきまして…。ユーリさん曰く術式は「緑の手」ではないかと。」
「ふん、なるほどなぁ。
たしかに「緑の手」の術式だ、あとは魔法増強、と凶暴化となぁ。
キラープラントの繁殖理由はこれかぁ…。」
冒険者ギルド長は初めて見たがなかなか雰囲気のある老婆だった。
髪がすごく長い、髪がすごい浮いてる、これも魔法だろうか?
ともあれ俺の古代語解読は半分くらいはあっていたようだ。
「魔道具事態は壊れているようだからこのまま回収させていただくねぇ。一緒に出てきた遺体もついでに回収させてもらう。
他にもまだ魔道具が埋まっている可能性もある…引き続き頼むよぉ。」
ギルド長と別れてそのまま作業に移る。
おびただしい量のキラープラントの枯れた根が辺りにあるが、まだ奥に地上部を残したキラープラントが残っているということは根も残っていることだ。
魔力回復薬をがぶがぶするぞ!
その後、日が完全に消えてしまった後も光属性の魔法使いが出した光を頼りにキラープラントを排除していく。
地上部と地下茎を含めて排除するのに結局丸1日以上かかってしまった。
おにぎりは美味しかったが、詰め込むように食べるしかなかったため本来の味を楽しめなかった気がする…。
また、地下茎を排除するにあたり多くの遺体を掘り起こした。流石の俺でも遺体の横でおにぎりを楽しく食べることはできない…。
二つ目の魔道具が出てくることはなかったがなんとも言えない結末でキラープラント駆逐作戦は終了したのだ。
「帰ったら、泥のように寝たいです…。徹夜は慣れてるはずなんだけどな…。」
「お疲れさん!まぁあれだけ魔法を使ったんだしいつもより疲れるのは仕方ねぇだろ。俺もこんなに遺体があがる作戦は盗賊討伐依頼だぜ。」
「そうですね、ツル型のキラープラント自体も珍しいですから。ゆっくり休んでくださいユーリさん。…私はまだしばらく残らなければ。」
なんだかんだ名前を聞きそびれて解散してしまった地属性の魔法使いさんはしばらくキラープラントの繁殖現場に残って地面を掘り返す作業を行うらしい。
運悪くキラープラントに捕まってしまった人々をせめて家族のもとに返してあげるためにも辺り一帯を掘り返すのだ。
キラープラントの根が残っている可能性もあるため森周辺の地面も掘り返すというのでとても頭が下がる。
肝心の枯れたキラープラントは大方回収されいまは分配と買取価格の調整中らしい。
ほうしゅの上乗せも楽しみだし分配をお願いした枯れたキラープラントでの薬作りも楽しみだ。
へろへろになりながらも半ば引きずられながら街までベイルさんと戻り自宅に帰る。
「すいません、ベイルさん連れ帰っていただいて助かりました…。今日は。ちょっとお構いできないかもしれません…。」
「ハハハッ、何度か現場に行ってると慣れてくるんだから仕方ねぇぜ、今日はぐっすり寝てくれ。お疲れさん!」
「はい、お疲れ様でした!」
はぁ、大変な1日だった…。
お風呂に入る気力もなく布団に倒れ込む。
前まで不満しかなかった布団だが今日だけはこんなにも気持ちがいい。
いろいろな仕事がまだまだ残っているけど今日のところは、
「おやすみなさい…。」
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