第4話ソーセージと忙しい日



 はぁ、今日の朝の目覚めは最悪…。

 ラベンダーの香りに包まれていても抜けないこの胸焼け感がなんとも言えない。


 胸焼けの理由は大したものじゃない、昨夜ちょっとリトルボアカツを食べすぎただけだ。

 確実に1人で食べる量じゃないそれが気づいたらなくなっていた。自分の食欲が怖い!


 食欲があるのはいいことだがすぐに気分が悪くなってしまって、結局昨日は風呂にすら入れずに唸っていた。


 唸っているうちに寝ていたのか気づいた頃には朝となっていた、現在時刻6時!

 いつもより早起きだが朝ごはんを食べる気が起きない、俺なのに。



「はぁ、先に配達に行くか…。」


 この気分の悪さでは昼の暑さに耐えられそうにないのでまだ涼しい朝に配達を終わらせてしまおう。


「プラティ商会に持っていくハーブティーと生産ギルドに持っていく甘草カンゾウののど飴がこんなものかな?」


 生産ギルド経由で俺の店に納品依頼が来ることもある。

 この街に住んでいない人でも依頼を出すと生産ギルドから依頼を出すと自分の街へ輸送してくれるのだ。


 その分手数料がかかってしまうが、リーゼロッテさんのお友達が評判をきき依頼を出してくれることがよくある。


 今回、依頼を出してくれたのはエルバム魔法学院の教員の方だった。


 やっぱり声を常に出している教師という仕事はのど飴必須だよな。


 甘草ののど飴はお菓子というよりも薬に近いので常飲することができないのが難点だ。


「お菓子の飴作りをしてみるのもいいかも…でも砂糖は高級だしな…。」


 砂糖の代替え品を考えているうちにプラティ商会に着いた、採集旅の前に納品に来て以来なので一月ぶりだ。


「こんにちは!納品に来たユーリです。」


「お久しぶりですね、ユーリさん。今、担当のものを呼びますのでお待ちください。」


 流石に大きな商会なだけあって納品受付にも担当の人がいるんだ。

 窓口の人と仲が良くなるくらいには納品に来ている俺でも毎回商会の大きさに驚いている。


「お待たせしました、久しぶりだね。ユーリくん、いつものやつと季節の商品だよね!」


「はい!そうです。今回の季節の商品はレモンバームのブレンドハーブティーにしました。」


 担当としてきたのはいつも俺の納品を担当してくれるアイザックさんだった。

 もと冒険者の筋骨隆々なおじさんだがとても優しい職員さんだ。


「わぁ!夏らしくていい香りだね。検品ついでに試飲させていただくね!」


「はい!お願いします。」


 あまり変なものは入れてないし、自分で飲んだ時も美味しかったから大丈夫なはず!


「香りがさわやかで美味しいね、甘みが足りなければ蜂蜜を入れる、と。はい大丈夫です!

 売上金はいつも通りに次月に生産ギルドの口座に振り込んでおくね。」


「ありがとうございます!」


「そういえば、ユーリくんは街学校のフィールドワークに臨時講師で呼ばれているんだよね?私もそうなんだ、魔物担当ではあるんだけど当日はよろしくね!」


「そうなんです!こちらこそよろしくお願いします。」


 アイザックさんがいてくれるととても心強い!

 わからないことがあっても知ってる人がいると聞きやすいしね。




 その後、アイザックさんに出口まで見送られ次に向かうのは生産ギルドだ。


「うーん、胸焼けしているとはいえお腹が空いてきた気がする…。」


 たまたま市場の出店でスムージーを売っている店があったのでグリーンスムージを買う。


「あ〜、冷たくて美味しい!」


 この店の店主は氷魔法の使い手なのかもしれない。

 普通は出店で冷たいものを出すのはコストがかかって難しいはずだし。


 果肉がゴロゴロのスムージーは甘くて冷たくて最高だ。


「夏の間にまた買いにこよう!」





 生産ギルドに着くと早速納品受付窓口に向かう、依頼されているものを確認してもらって完了の簡単な手順で終了だ。


 午前中の早い時間に来たからか、まだ人も少なくすぐに終わってしまった。


 通り抜けてきた市場もまだまだ人が少なかったので今のうちに買い物を済ましておこうかな。


 今週末あたりに近くの森に果物を採取しにいくつもりなので買うのは果物以外だ。


 魔道具店とかを冷やかしで見るのが好きなんだが、時間的にまだ空いてないだろう。


「まだ、開いているのは市場だけか。」



 今歩いているところに売っているのは主に食器だ。

 白に赤いラインの入った磁器じきのお皿が綺麗だったので購入。


 食事に使わなくても植物を育てるためにやたらと食器を買ってしまうのは俺です。


 これ玉を作ろうかなぁ、「緑の手」を使ったら土台にこれを定着させやすいはずだ。


 食器は最初に買ったものに加えて全体が青から白へグラデーションになっている茶碗と薄い紅色のお椀も買った。

 全て磁器の食器で今日は磁器を買い付けに行った行商が町に来ていたのだとわかった。




「レーズンだ!」


 ついでに大粒のレーズンが売っていたので5キロほど買ってアイテムバックにイン。


 レーズンは生ブドウに比べてカリウムが多く含まれているので夏バテ対策に抜群だ。

 保存も効くので旅に持っていこうと思う。


 肉類も豊富に置かれているが、今うちの家にはリトルボアの肉が大量にある。

 …ソーセージはないから買おうかな。食べたいし…。


 迷いに迷って精肉店の隣の出店で店主の奥さんが作っていた大きなソーセージ焼きを一本買って食べ歩き。


 ホーンラビットの肉とリトルボアの肉を合わせているらしく、あっさり過ぎず油っこすぎずで食べやすい。


 この頃には胸焼けのことも忘れて夢中でソーセージを食べていた。


「帰ったら書類作らなきゃいけないのか…。」


 いや、今だけはソーセージのことしか考えたくないな…。



 考えることを先送りにしても結局書類作りをしないといけないのには変わりないので今日は一日書類を作っていた。

 自分の利益につながることなので出来ることはしておかなければ。


 珍しく回復薬や傷薬、魔力薬という魔法植物からできている魔法薬を買いに来る冒険者の来店が多買ったので昨日よりとても忙しい1日となった。


 草原に強い魔物でも出たのだろうか、それとも遠征から帰ってきた冒険者たちが備品補充に買いに来たのかはわからなかったが、仕事三昧な充実した1日だった。

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