ココの正体

ケンとココの仲直りをきっかけに和の國の人々とも打ち解けるようになってきた。

そして1週間が経ち。グルメ星での生活に慣れてきた頃、ケンがミドリの店に訪ねてきた。

「あら、久しぶり。仕事は見つかった?」

ケンは元気よく返事した。

すると、厨房から食材を切る音がした。トントンとリズムよく切ってる。だいぶ手慣れた様子だ。新しい料理人を雇ったのだろうか。

「ミドリさん、新しい人雇ったんですか?」

すると、ミドリは驚いた顔をして

「違うわよ。ココよ、ココ。あの子料亭の娘で和食の腕がとてもいいのよ。」

奥から

「ミドリ、これ3番テーブルの方に出して。」

とココがテキパキと指示を出していた。

「あれ?ケンじゃん。どうしたの?お腹空かせてうちの店来たの?」

今までのココからは想像もしない明るさで話掛けてきた。

「お前、料理人の娘だったのか?」

「あ、そうだよ。言ってなかったか。ミドリはサブ。基本は私が厨房に立って料理してるの。よかったら、食べていきな。」

そう言って、カウンター席に案内した。

「簡単なのでいい?」

「うん。」

カウンターの前に次々と料理が運ばれてきた。白和え、豚汁、鯖の塩焼き、だし巻き卵、そしてご飯。

「これ全部ココが作ったのか?」

「そうだよ!さ、食べて。」

ケンはお椀を持ち上げフーフーとして豚汁を口にした。

出汁の風味に豚バラと野菜の旨味が凝縮されてて美味しいではないか。

ケンは思わず感動して涙をこぼした。

「どうしたの?何で泣いてるの?」

ココがきょとんとした顔をして聞いた。

するとなぜか笑顔でケンは一心不乱にご飯を食べた。彼にとっては家族との思い出の味だったからだ。

「ココ、お前もしかして華涼かりょうって店の子か?」

「そうだけど...。何で知ってるの?」

「この味は火の町で有名な城主も通う華涼の味だ。お前そこの娘だったのかよ!」

ココの父は華涼の料理長で火の町の城主の料理を全て作っていたのだ。そしてケンの父も火の町の城主に会計係として仕えていたため、城主の計らいで自分に仕えている者の家族にまでその料理を振る舞っていた。だからケンは知っていたのだ。

「私は父の背中を見て女として初めての和の國の料理人になりたいと思って一生懸命勉強して料理人になったんだ。でも、やっとなれて父と一緒に料理ができたと思ったのに....。」

ココは強く拳を握りしめてこう言ったのだ。

それを聞いたケンはふと思いついた。

「なあ、ココ。お前そんなに料理できるなら他の料理にも挑戦したらどうだ?こんだけ美味い和食を作れるんだったら、他の國の料理も作れるよ。俺応援するぜ。」

しかしココは首を横に振った。

「ミドリを置いてこの店を出ていく訳にはいかない。命の恩人に恩返しするまでは。」

ミドリはココにこう言った。

「私は十分貴方から恩を返してもらったわ。だからここの店は私がやるから大丈夫!ココは料理の勉強をしてきなさい。きっと貴方のお父様も喜ぶと思うわ。」

ココは少し考えて、

「ちょっと考えさせて。」

と言い、厨房に戻った。

果たしてココは旅に出るのか、ここに残るのか....

次回へつづく。


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食のテーマパーク ハンヌ @hannu69

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