鎌倉の武将・大庭景義(おおば かげよし)の半生を描いた歴史小説です。
老成した景義が、若い頃の印象的な出来事を回想するという形で物語は進みます。
合戦で膝に矢を受け戦場に立てなくなった景義の、再生とその後の人生が、
美しい中世鎌倉の景色の中に、情感豊かな筆致で描き出されます。
「第二部」となっていますが、第一部を読まなくても楽しめると思います。
この第二部の中に景義の子供時代から兄弟との絆までしっかりと含まれているので、
一人の武将の人生を十分に味わうことができます。
おすすめポイントは、風景描写・心情描写共に大変美しいこと。
動きのないシーンでも読ませる筆力をぜひ感じ取っていただきたい。
――という意味では、第一部も大変おすすめです。
第二部のほうが一人の主人公を立て、彼の幼少期から恋、挫折、その後の人生と描かれている分、伝記小説らしさがあります。
第一部は印象的なシーンがフラッシュバックのように続き、美しい絵巻か詩を見ているようでした。
それゆえに、筆致の冴えをより強く感じ取ることができます。
意外と知らない鎌倉時代の風俗も含めて、きっと楽しめるはずです。
武将が主人公だけど合戦が主ではない、人生そのものを描いた歴史小説、ぜひ読んでみてください!