隅っこガールは一途に貴方を思っている
結局分からないまま放課後になってしまった。
そして最悪なのが私は今日は当番だったことだ。
本を読んでいてもそれが頭にチラついて集中できない。
今日は誰も図書室に来ないせいで仕事がなく静かで余計に考えてしまう。
どうやら私は思いを伝えるべきだと星野さんの話を聞いていて思ってしまったみたいだ。
「あのすみません」
「はい…あ」
誰だこんな時に私は考え事で忙しいんだと内心悪態をついて振り向くと、頬をつつかれた。
「モチモチだ」
「あ、え…?」
つんつんと目の前の男子は楽しそうに触っている。
「永瀬くん?!」
ガタリと大きな音を立てて私は立ち上がった。
どうして彼がここにいるんだよ!タイミングが最悪すぎる。
「本借りに来たんだよね」
「なるほど…ごゆっくり」
そっかそうだよね今の行為だって私で遊んでるだけ。
思い上がるなよ私、触ってもらえて嬉しいなって思うなよ。
「でさ、おすすめの本教えて欲しいんだよね…俺本読むの久しぶりでさ」
あの日と何一つ変わらない声と表情で。
私の胸がドキドキして彼を意識しているのを自覚しそうになるからやめて欲しいと思うくらい。
「わ、私探してきますからここで待っててください」
どうしても離れたくて、見ていると一緒にいるとどんどん自分が永瀬くんに恋しているっていう事実から目を背けたくて逃げるようにして立ち上がる。
「一緒に行くのはダメ?」
私の気持ちを知っていてこれを言っているのなら永瀬くんは性格が悪いと思う。
ずるいそんな寂しそうな目をして私を見てダメだなんて言えるわけが無い。
「ダメでは…ないです」
「良かった頷いてくれなかったらどうしようかと」
ふにゃりと柔らかく彼は笑った。
私は反対に頷いていなかったらどうなっていたんだろうと思って顔が強ばった。
とりあえずどこの本棚に行けばいいか悩んでチラチラと永瀬くんの様子をうかがう。
「読みたいジャンルとかは…」
「そこもおまかせしようかなと」
今緊張している私に対してそんなことを言わないで欲しい。
「田辺さん初めて声掛けたときキレ気味だったのに今とは全然違うね」
「あの時は申し訳ないと思ってますよ」
「気にしてないから大丈夫だよ、面白いとは思ったけど」
あの時最悪な出会い方をしたと思っていたが、彼はそう思ってなかったみたいで安心した。
「えっとこれなんてどうでしょうか?」
私は気持ちを切り替えて図書委員としての仕事をしないと。と言い聞かせて本を探す。
そこでファンタジー小説を見つけて、取り出した。
少し長いお話かもしれないけど一度読んだ時に読みやすくて次のページが気になってワクワクしてページを進めた記憶がある。
「それは?」
「ファンタジー小説で王道なんですけど、勇者がさらわれたお姫様を助けるお話で少し長いんですけど作者さんが文章の上手い方でして読んでいると次のページに行くのが楽しみで!…あ、すみません語り出しちゃって」
「全然大丈夫だよ、むしろそこまでキラキラした笑顔で言われたら気になっちゃった。これ借りてくよ」
「分かりました」
私はその本を持ってカウンターに戻って貸出の手続きをした。
「返却期間は二週間です…と言っても二週間を過ぎても問題はないですのでゆっくり読んでくださいね」
「ありがとう田辺さん」
自分の勧めた本を大事そうに永瀬くんは持ってくれる。
私はそれが嬉しくて自然と笑みがこぼれた。
「お役に立てたなら嬉しいです」
「田辺さん」
「はい?」
「俺田辺さんのそういうところ好きだわ」
「…ありがとうございます?」
「あのさ俺の言ってる言葉の意味わかる?」
「褒めてくれてるんですよね」
私がそう言うと彼は「マジか…」と頭を抱えてしゃがんだ…耳を真っ赤にして。
私はジワジワと彼の言葉の意味を理解して顔が熱を持ち始めた。
「あ、あのそういう言葉は本当に好きな人に言ってあげてください!からかわないでください!」
そんなわけがない!私みたいな隅っこ人間を好きになる人なんて…それも片思いの相手がピンポイントに私を好きなはずがない!
「好きな人に俺は言ってるよ」
「…うそ」
「嘘つかないよ」
「都合のいい夢で明日になったらなかったことになって「ないから大丈夫だよ」
永瀬くんの両手が私の顔を包み込む。
優しく私のことを熱を孕んだ瞳で彼は見つめる。
「ずっと片思いでいるつもりでした」
「そんな寂しいこと言わないでよ」
「永瀬くんが…」
「待った、そこからは俺から先に言わせて欲しい」
彼が私の口に指を押し当ててその先の言葉を止めた。
私はコクコクと小さく頷いて永瀬くんを見つめる。
「田辺さんのことが好きです」
私はその言葉に嬉し涙を流しながら「はい」と言った。
好きなってごめんなさいっ!! 赤猫 @akaneko3779
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