第3話 再
ふれあいカフェ『HYPER・MOHUMOHU・KINGDOM』の夜は遅い。今日も愛想よく振る舞ったウサギたちをお利口さんと撫でまわして休養室に送った
「深風さん、今日もがっぽり稼ぎましたね」
「嫌な言い方を覚えるなよ祈子、もふもふに戻ってほしくなる」
「もふもふですよ、耳とか」
「それはそうだけどさぁ」
垂れ下がったうさ耳を触りながら、話を続ける。カフェで働き始めて三年になる。もう少しで璃々香は三十路だ。アルネブドロップたち、太陽系外の子たちを送り返す算段はまだない。時間ばかり過ぎるのに、途上のことが多すぎる。ただ、その過ぎる時間は、彼女たちにとっては一秒さえ譲れないほどかけがえのないものだった。笑顔も涙も、指では数えきれない。専業になって、二人は合計五○を超えるルナドロップを月に戻してきた。
「あんた、絶対元の星に戻してあげるからぁ、メニール」
「何回聞けばいいんですかそれ、気長に待ってますよ」
アルネブでの本当の名前は伝えてある。ひとのいないときにだけ呼んでいい約束だ。酔いが回りまくった璃々香は、いつもどおり
「……ねこじゃん」
にゃん
・・・・・・
「ここは?」
「あなたの種族の底の星だよ。わたしはメニール、きみは?」
「わた、わたしは、りりか」
「りり、うん、りりぴょんでいこう! まだ小っちゃくてこわいだろうけど、ひとは祭で戻れるからすぐだよ! わたしも祈っててあげる」
「うん、ありがとう。とっても、とってもうれしい……」
「わわ、なかないで、わたしのみみでふかないで!」
底の星から――了
底の星から Aiinegruth @Aiinegruth
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます