第12話 魔法の粉

 ここは日本の都会でも田舎でもないどこかの町のどこかの住宅地にある秘密結社のアジト。今日も構成員の長男のエツ(10歳)、次男のロク(8歳)、三男のミツ(5歳)が元気に戯れています。


「ヒャッハー!」

「ヒャッホー!」

「ヒャハハハハハハハハハ、ヒャハー!」

「ヤハ! ヤハハハハハハハハハ、ヤッハー! こいつはご機嫌だぜ!」

「ロクもミツもさっきからうるせえぞ! 静かにしろ!」

「エツの兄貴もこいつを試してみろよ! ぶっとぶぜえー! ヒャハハ」

「エツの兄者もこれを試してみるがいい。絶対に気に入るぜ! ヤハ!」

「むぅ、大人の事情で商品名を出さないジッパー付きビニール袋に入っているこの粉は、もしや……! やいやいやい、ロクもミツも見損なったぜ! まさかこんな腐れ外道の魔法の粉に手を出すとはな! このバカチンがあ!」

「あべし! え、エツの兄貴、違うんだ、これは違うんだよお、だから殴らないでくれよお」

「ええい、何が違うっていうんだ! ロク、お前なんかこうだ!」

「ぶべら!」

「まあまあ落ち着けよ、エツの兄者。ロクの兄者を足蹴にしたって何も解決しない。なにせこの粉は、俺が作った著しく合法的な魔法の粉なんだからな。ほれ、よく見てみろよ」

「ミツ、嘘をつくならもうちょっとましな嘘をつけ……む、この甘じょっぱい香りと粒の大きい粉は……」

「塩、砂糖、スキムミルク、顆粒だし、スープの素」

「ま、まさか……そんな」

「塩、砂糖、スキムミルク、顆粒だし、スープの素。スープの素はお好みで変えるのだぜ」

「嘘だろ!?」

「嘘じゃねえ。これはみんなが合法的に、リーガルにハッピーになれる粉だ」

「これを! お前が! 作ったっていうのか!?」

「作り方はアングラサイト、いわゆるダークウェブで拾った」

「く、さすがは我が弟だ。クック〇ッド先生に聞けば分かるものを、わざわざそんなところで拾ってくるとはな……」

「どうだ、兄者。試してみる気になったか?」

「ふ、断る理由がないな。どれどれ……ふふ、ふふふふふ。ああん、俺、はっぴー」

「ハッ〇ーパウダー最強! ヒャッハー」

「〇ッピーパウダーは究極!」

「ハッピー〇ウダーこそ至高! ヤッハー!」

「ごるぁぁあああああ、お前たち何やったんだい! 台所が粉まみれじゃないか!」

「「「あ」」」

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悪の秘密結社 筋肉ふんどし団 津多 時ロウ @tsuda_jiro

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