貸し借りナシのスマイル無料

「はい、これさっきのカフェ代と、順番待ちしてくれたお礼」


 彼女は紙幣を渡してくる。恋人なんだし、これくらいおごるしお礼のお金もいいのに。


「貸し借りナシにしたいんだよね。長く付き合うつもりだから、いつの間にかどっちかに負担がかたよってないように、その都度きちんと精算しておきたくて」


 長く付き合う前提なのはうれしいけど、なんだか味気ないな、お金で精算するの。

 そう思ってると、彼女はずいっと顔を寄せてきた。


「あ、そうだ。あたしコンビニとかでも、店員さんにお礼言うタイプなんだよね。ありがとう」


 にっと彼女は笑う。

 その笑顔があんまりにも素敵で、清算しようと財布を出したら押しとどめられた。


「スマイルは0円でーす」


――――――


毎月300字小説企画、第29回「金」に参加。

本文300字。

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空は何を見ている(不定期更新140字SSなどの置き場) 雨蕗空何(あまぶき・くうか) @k_icker

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