発した言葉が物質化して相手に飛んでいく。ちょっとおもしろそうな世界観だと思うと同時に、なんかこれって日常的に知っている世界のような気もしてくる。そう、見えないだけで、我々は日々、物質化した言葉をやりとりしているのだ。投げかけられた言葉は、ときに相手を直撃してダメージを負わせ、ときにあたたかく相手の心を包み込む……我々がよく知っている世界の話ではないだろうか。
この小説は、そんな物質化・可視化した言葉が、相手に向かってマッハで飛んでいく、よく知っているはずなのにどこかシュールで、心の内側をむき出しにするような、連作短編である。この小説もまた、読む人の誰かの心に「ぎくっ」と思わせたり、勇気を届けてくれたり、するかもしれない。