無視が“必要”な理由、ハラスメントがエスカレートする構造

 どんな相手、どんな事情であれ“無視”と言う行為に引け目を感じるのであれば、こう言い換えると良いかも知れません。

「売られた喧嘩を買わない権利」

 とりわけ、我々日本人は、未だ調和だとか波風を立てない事を強要する・されがちです。

 ゲンさんのような人達は、あらゆる論法を尽くして、自分が大勢側・常識側であるように仕立て上げ、必ず、大勢VS一個人の構図で戦いを仕掛けてきます。

 結果、「喧嘩をお断りする権利」を巧みに“無視”と言う悪の行為に摩り替えるのです。

 はじめこそ、仕事の指導など「無視できない尤もな」所から攻めてきます。

 人は誰しも、必ずいつかはミスを犯すので、彼らからすれば、その瞬間を捕まえれば良いだけです。

 そして、叱責する者とされる者の力関係を築き、少しずつ要求をエスカレートさせていきます。

 最初は「不純物混入の危険を考えろ!」と言う至極真っ当な理屈で作られた力関係から、最終的に「お前はどうしようもないから自殺しろ」と言う要求にまで突っ切ってしまうのです。

 

 ここで、私がブラック前職でされた事をレベル分けして並べていきます。

 それぞれの加害者がタケさんなのか、ダイさんなのか、元部長などの第三者なのかは、ここでは区別しない事とします。

 当然、下に行くほど、危険性の高いハラスメントになっています。

 

【レベル1 正当な指導】

 ・仕事の過失や不手際を叱責

 ・立場以上の自己啓発、研鑽の要求

 

【レベル2 行き過ぎた指導】

 ・問題点のレポートを私的に要求

 ・凡ミスを大声で叱責

 

【レベル3 人間は感情の生き物なので仕方がないライン】

 ・不機嫌オーラ、嫌いオーラを常に放出

 ・(任意で)二人組で協力しなければならない場面で無視

 ・勧めたお土産を無視

 ・挨拶を無視

 ・すれ違いざまに威嚇

 ・ミス未満の重箱の隅を大声で叱責(※1)

 ・訊くとキレる

 ・訊かないとキレる

 ・説明されて一瞬で理解しないとキレる

 ・説明すると、必ず「要領を得ない」として、食いぎみにキレる


【レベル4 不必要な加害行為】

 ・上司や後輩など事へのレポートを私的に要求

 ・正しい行動、身に付けたセオリーに難癖をつける(※2)

 ・子供の退院を迎えに行く為の早退を、難癖つけて阻止(※3)

 ・通勤中に信号無視をしたと言う(又聞きでの)言い掛かり、その自白の強要

 ・毎日終業後、2時間の拘束(※4)

 ・LINEの着信音が気に入らないから変えろと強要(普段、ほとんど接点のない事務員)

 ・病欠など、欠勤がある度に尋問


【レベル5 法に触れる越権行為】

 ・眼鏡の購入を強制(※5)

 ・休職を申請時、外に呼び出して2時間以上に渡り拘束。辞職の強要

 ・退職時の有給消化を握り潰す。「クビと言う形でここを去る事になると、新しい職場で都合が悪いのではないか」

 

【レベル6 未必の故意による殺意】

 ・フォークリフトの無講習運転を強制


【レベル7 明確な殺意】

 ・休職の復帰後「休んだ分を死ぬ気で取り返せ」と、宿題ノルマを倍増

 ・フォークリフト運転の勉強の禁止「体で覚えろ! その時間を他の勉強に回せ!」

 ・強い目眩(つまり、最悪の場合脳梗塞の可能性)を感じて早退した事を大声で尋問(※6)

 

 

 パワハラと指導の判別が難しいのは、それぞれの境界がスペクトラム、虹色のようにファジーだからだと推測します。

 被害者の私自身ですら、上記のリストを作っていて、どれをどのレベルに分類したものか、結構迷った程です。

 相手が普通の人間であれば、はっきり言ってレベル3までは受容しなければならないとは思います。

 この世に完璧な人間などおらず、必ず、ここで言うレベル3相当の落ち度は誰しも持っている筈です。

 しかし、

 ゲンさんのような人達に対しては、1

 それが例え、非の打ち所のない完全無欠な正論であっても、です。

 何故なら、彼らにとってのレベル1は、レベル7の“明確な殺意”にまで直結しているからです。

 例えばの話、虹の色を見て、暖色系のみを抜き出そうと考えたとします。

 大体の人は、赤・オレンジ・黄色……から黄緑の境目で迷うくらいでしょうか。(=他人へのヘイトをレベル3までで踏み留まる判断ができる)

 しかし彼らにとっては「黄色でブレーキをかけ、緑に来た頃には停止する=程々の所でハラスメントを自覚する」能力がありません。

「赤から連続しているから、真っ青の部分も暖色系。俺がそう言ったらそうなんだ!」

 と、悪気無く、自然に捉えているようです。

 だから、例え、その場では“正論”に対して不当な逆ギレになろうが不誠実になろうが「明確な殺意」を受ける入り口になってしまう以上、遅くともレベル3以下の段階で彼らとの接点を絶対的に絶つ必要があるのです。

 

 上下関係は会社の秩序のために絶対だと言うのであれば、例えば、

「お前は給料分働いているとは言えないから、俺に支払え」

 と言われて、支払うでしょうか?

「家族なんかが居るから仕事への意識が低いんだ。離婚して親権を手放せ」

 と言われて従うでしょうか?

 馬鹿げた仮定だと思われるかもしれませんが、彼らはこれを、何の疑いも無く自然に強要し得る素地を持っており、彼らの中での辻褄さえ合えば、そうなるように問答無用で行動してくる人達なのです。

 絶対に逆らえない力関係が構築されていた場合、こんな馬鹿げた要求を飲むか、職を失うかの二択を迫られます。

 普通に考えれば絶対に後者を選ぶ……と思いたい所ですが、適応障害などの極限状態まで行くと、人は正常な判断が出来なくなります。

 だからこそ、「死ぬくらいなら」と簡単には辞められないのです。

 このままエスカレートが続いていたらどうなっていたでしょうか?

 次はフォークリフトの運転席からリフトへ身を乗り出す事を要求されていたかも知れない。(リフトに挟まれて死亡する事故の原因1位)

 あるいは、荷を偏った重心で持ち上げる事を要求されていたかも知れない。(これも、フォークリフトが横転して死亡事故になる原因です)

 何故なら、彼らからすれば「私がミスによって事故を起こす」と言う結論が先にあり、いつまでたってもそうならないのは“間違い”であるから。

 果たしてその通りになると、彼らはこう言う筈です。

「やっぱりあいつはやらかしたか。俺の予想した通りだった」


(※1)

 社内を最短距離で移動しようとすれば、

「そこ開けんな! 寒いんだよ!」

 別のルートから行けば「わざわざ遠回りしてんな!」

 と言われた事でしょう。


(※2)

「それは自分で考えた事なのか? 今の場合も100パーセント正しいの? ねえ、何で即答できないの?

 まあ、正しいんだけどね。運が良かっただけだ」

 前職の末期、私はそれまで積み重ねたものや会得したものをほとんど剥奪され、過労も重なってなにも出来ないに等しい状態でした。


(※3)

 妻は自宅に車を置いて付きっきり、私には母親は居らず父親も仕事で忙しい。妻の両親は他県。

 驚いたことに「病院に車をあらかじめ停めておけば良い」そうです。

 総合病院の駐車場とは、一個人が占拠して良いもののようです。

 結局「妻の義母に他県から来てもらうので、やっぱ良いです」と言えば、

「お前がそう判断したのなら、別に」

 と、責任逃れには余念がないようです。


(※4)

 前回ご紹介した、会社の有給消化の指示に素直に従った理由を詰問されるなど、およそ実務には関係のない事ばかりです。


(※5)

 上司のミスを見落としたのは目が悪いからだ、と言う理由です。裸眼で車を運転できる程度には視力がある事を理詰めで説明しましたが、

「それは関係ない。実際に行動する事がここでは大切なんだ!」

 として、自腹を切る気が無いなら社内の品質管理委員会で予算組ませると脅されたので、結果、従いました。

 家では妻がワンオペ状態で、さっさと終わらせて帰りたかったし。

 また、似たようなケースで、夜勤の後輩に難しい仕事を残したくなくて数分ばかり定時を越したら、

「時間が読めないなら腕時計を買え」

 と言うのもあります。もちろん、従いました。極力安物を探して。

 

(※6)

 尋問内容は「何故、最初に脳神経外科に行ったのか? 普通内科では」や「翌日も半休した理由は?」

「○○総合病院でなければいけない理由はなんなの?」

 脳神経外科には病院が案内した順路であり、翌日も半休したのは耳鼻科が前日に休診だったため。

 病院がそこでないといけない理由はもはや答える気も起きませんでしたが、昔から不調の時にはそこに通っているから。最寄りの総合病院だから。

 結果的には脳には異常無し、耳石と言うカルシウムの粒が三半規管に落ちた事が原因で、実のところそれは私も予測していました。

 しかし、素人判断が出来ないから病院へ行きました。

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