終わりに(本作品の未発表話のネタばれや解説を含みます)
本作品の構成を考えた時にもっとも悩んだのが『自分が同性愛者だと思い込んでいた主人公が実はそうではなかったと気付く』いう展開です。
最初にざっくり書いた話の流れを読み返した時に、主人公が同性愛者ではなかったという話の流れが同性愛者を否定する内容だと読者から捉えられたりしないだろうか? と危惧しました。
この物語を含めて全ての物語は(一部を除いて)設定やキャラクター等の世界観を共有しており本作品に登場するキャラクター達もまた世界観を共有している他の物語に登場します。まだ発表前の構想の範囲内のお話がたくさんあるのですが実は性別が曖昧なキャラクターが多数登場してきます。
ただ、登場する多様な性のキャラクターがトランスジェンダーに偏っていて同性愛者のキャラクターは存在しておらず瀬能伯美が初めての登場となります。登場する多様な性のキャラクターがトランスジェンダーに偏っていたのはたまたまの偶然です。
全く別の物語に『先天的な役割を理解した上で互いに後天的な役割を分担していける社会や家庭の実現が望ましい』ことを基本理念としている学校が登場します。残念ながらこの学校と瀬能伯美、関山裕香の二人の接点は今のところありませんが、この学校で学んだ卒業生たちは本作品の設定の十数年後に瀬能伯美、関山裕香の二人と出会う予定です。
本作品は当初、関山裕香を主人公として書き始めました。あくまでも瀬能伯美はその相手役だったのですが共有している世界観に同性愛者が一人もいない事に書いている途中で気付きました。
そこで、同性愛者のキャラクターを多くの物語が共有する世界観に取り入れたい、それも主人公として書きたいと強く思い、本作品の主人公を関山裕香ではなく瀬能伯美として書き直しました。
ただ、正統派の同性愛者の物語を書くには知識も技量も経験も圧倒的に足りないので、それは早々に諦めて主人公を同性愛者ではない世界に引っ張り込みラブストーリーの王道であるボーイ ミーツ ガールの展開へと持ち込む事にしました。その同性愛者ではない世界に引っ張り込むために使った手段が主人公が同性愛者ではないと気付くという設定だったのです。
その気付かせ方が女性に発情した末のレイプであるのは如何なものか? と思いましたので、ここではヒロインの関山裕香に悪者になってもらい彼女に事前に恋人宣言をさせた上で瀬能伯美を積極的に誘惑させ、無抵抗で伯美を受け入れさせました。この時の裕香の気持ちはスペシャル・ストーリーのSS03に描いてあります。
結局のところ伯美は裕香の策略(元を正せば亜美の策略)にまんまと引っ掛かった被害者だったわけです。
本作品では色分けできない多様な性の存在があると言うことを登場人物である関山裕香と北川あすみの二人を通して語らせています。
とくに第27話で関山裕香に語らせた『ちょっとした事で全く違う性だと思っていたかも知れない』という台詞と『私は理解する気なんかないよ。だって考えたって分からないもん。でもね、そういう色分けができない気持ちがあるっていう事を認めることはできる——』という台詞こそが多様性を許容する社会に必要なことだと私は考えています。
性的マイノリティに対する本作品の主張は関山伯美が第27話で語る次の台詞に集約しています。
——そうか、自分と違うことを理解することは難しくても存在を認める事はできるんだ
多色のペンはたまたま偶然に物語を書く前からキーアイテムとして存在していたので話の内容にオーバーラップさせて活用しただけです。
本作品から十二年後の後日談となる作品が関山裕香を主人公として既に公開されています。もちろんこの(まだ)空白の十二年間を埋めるお話も別にあり、その空白の十二年間のネタばれも公開済みのお話には一部含まれていますがよろしかったらその作品もご一読下さい。
『謎のカリスマデザイナーの中の人のとある一日』
https://kakuyomu.jp/works/16817139557346851635
また、『YESブランド』の商品が物語のキーアイテムとなっている『ある日大きな木の下で恋に落ちた。猫も落ちた』という作品も公開しています。こちらもご一読いただけると幸いです。
『ある日大きな木の下で恋に落ちた。猫も落ちた』
https://kakuyomu.jp/works/16816700429139703189
最後に本作品をお読みになった方が一人でも多く多様な性について認識し、認め、そして許容できるようになれば幸いと願いつつ執筆をしています。
人気者だった夫がボッチの私に落とされた理由(わけ) 相内麗 @yukiy777
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