第109話 南無御襁褓不要

 今回のタイトル〈襁褓〉は相当の難字だが「むつ」と読む。

「な~む~お~む~つ~ふ~よ~」と、御経を唱えるように…。

○「南無御襁褓不要」と唱へ最期まで生活意欲の増進あらまほし


▼この願いを込めて、老健カルモナにはプロジェクトDF(Diaper Free)がある。

 そのモットーは「排泄優先」で、リーダーは介護長だ。

 本来〈排泄〉とは「待ったなし」の生理現象であり食事や入浴のケアとは違う。


▼しかも失敗は生活意欲を大きく削ぐ。

「この点を理解して高齢者のケアを心掛けましょう」と、リーダーは繰り返す。

「知られたくない」は当然の心理である。

「汚した下着を隠す」や「汚れたオムツを外す」なども当然の行動だろう。

「排泄の失敗などにも、さりげなく対応しましょう」は大切な合言葉である。


▼たとえオムツが必要な状態でも、排便やオムツ替えなどをトイレでするケアは生活意欲を増強する。

 寝たままオムツに排泄させておき定時に交換する介護では、高齢者の尊厳を奪うだけでなく褥瘡の原因にもなる。

 また尿路感染症(さらに女性では子宮溜膿症)を起こしやすい。


▼これらの予防として、寝ている骨盤を立てることが介護のポイントだ。

 介護用ベッドを起こす際も(骨盤と背中を曲げないよう)お尻をベッドの曲がる位置へ合わせることは必須。

 …と介護のプロは徹する。


 多忙な彼らに多謝!

○「這えば立て、立てば歩め」の親心。「骨盤立てよ」は介護の心得


▼そもそも人間にとって生活動作の基本は二足歩行である。

 もし歩けなくなっても、立つ(立たせる)ことの効果は大きい。

 それが無理なら、座る(座らせる)ことでも十分だ。

 寝たっきりはいけない。


いつか来る。


きっと来る。


その日に向け、皆さん御一緒に!

「南無御襁褓不要」と三回の御唱和を。


(20210531)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る