第105話 ナノとギガ

「新型コロナウイルスの大きさは100ナノメーターである」…と言われても(電子顕微鏡が必要な世界なので)当然その微小さは実感できない。


▼ちなみに「ナノ」は〈十億分の一〉の意味だから「ナノテクノロジー」とは〈制作者本人の十億分の一の小さなものを作る技術〉と言えよう。


▼そんな技術が作り出した〈カーボンナノチューブ〉という物質がある。

 これを垂直に並べれば光の吸収率が増し〈ベンタブラック〉になるそうだ。

 通常の黒色塗料の光吸収率(95%程度)に対してベンタブラックは99.965%らしい。

 さらに最近〈究極の黒〉ができたと聞く。

「その吸収率は99.995%だ」と言われても違いは微妙すぎる。


▼教科書を見ると「物体への入射光は〈反射・吸収・透過〉という三つの行先に分かれ、これらの間にはエネルギー保存則が成り立ちます」とある。

 光を当てても(すべて吸収されて)反射や透過はしないはず。

 もし〈究極の黒〉を塗料にしたら世の中は混乱するだろう。

○ぬばたまのベンタブラックより黒き〈究極の黒〉はブラックホールか


▼逆に十億倍を「ギガ」と表す。目で見て「大きい!」と感じられれば、その巨大さを人間は理解できる。

 しかし歴史の時間軸のように目に見えないと(どれくらい大昔なのか分からず)とんでもない思い違いをしていることもある。


▼リチャード・ドーキンス氏は『進化とは何か』で次のように例えた。

「両腕を広げ、右手の指先を地球の誕生に左手の指先を現在とすれば、右手首から左手首くらいまではバクテリアの時代。そして恐竜は左手の平あたりで登場し、人間は左手の爪先くらいになります」と。


▼地球破壊を続け「万物の霊長」などと思いあがる我ら人間に反省の一首。

○一尋(ひとひろ)を地球の歴史と見立てれば文明史とは爪先ほどなり


(20210502)

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