第102話 コロナ禍に黄砂
ベランダで運動しながら周囲を眺める。
黄色の紗(しゃ)が掛かったような景色はコロナ禍の憂さを増す。
○春陽さへ浅黄の紗に変へてたゆたへる黄砂の里はゴビ砂漠らし
○コロナ禍にゴビ砂漠より飛来する黄砂のおほふ日本列島
▼岩手県営体育館前に広がる児童公園は旧陸軍の偕行社の跡地で巨木がならぶ。
○騎兵第三旅団あとのプラタナス〈宮家お手植え〉にして令和に伐らる
○明治からの世の移ろひを見飽きしや喬木プラタナス令和に逝きぬ
▼コロナ禍が続き死者数も増すばかり。
日本の累計死者数は既に9千人を超えている。
その多くは高齢者であり、若者は感染しても軽症か無症状で済んだらしい。
…が元気であるはずの若者の死因トップは、何と〈自殺〉だった。
○きみ知るや三十代と二十代の死因一位が〈自殺〉なること
○かつてなら結核に逝きし若者の尊き命を自ら断つとは
▼元監察医の上野正彦氏は(数万体の検死経験から)年間2万人以上の〈自殺大国〉日本の現状に警鐘を鳴らす。
著書の『自殺の9割は他殺である』というタイトルに驚いた。
早とちりで「自殺遺体の9割に他殺の痕跡が見つかった?」かと誤解しただけである。
よく読んでみると「直接は手を下さなくとも自殺するしかない状況に追い込んだ」ことを強調するため〈他殺〉と表現したのだった。
▼それにしても〈自助〉を迫るばかりの社会では、あまりにも生きにくい。
○今日でさへ嘘はつかぬと政治家ら弁舌さわやかエイプリルフール
○ワクチンに負けじとコロナ変異株。継代の意志持つかと思はる
▼書斎の窓から望む岩手山に平穏を祈る。
春陽に鷲の雪形も崩れてきた。
○黄砂やみ青空に映ゆる白き峰にコロナ禍もやめと掌(て)を合はせをり
(20210411)
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