第84話 それは重畳(ちょうじょう)

 「あなたも頑張らなくっちゃね」と妻は振り向く。

 広げられた盛岡タイムスには、白衣の女性が本を胸に微笑んでいる大きな写真。『70歳の新人施設長が見た介護施設で本当にあったとても素敵な話』というタイトルからして面白そう。


▼著者の川村隆枝先生は、近所の〈老健たきざわ〉に施設長として赴任された由。「団塊世代で産婦人科医だった」に親近感がわく。

 かつて国立仙台医療センター時代『夫の介護が教えてくれたこと』を上梓したそうだ。

 プロフィール「医師・エッセイスト」に憧れる。


▼私事にわたるが、白い巨塔に生息していたころは論文を書くのも仕事の一部。

 専門書を出したり医学雑誌に依頼原稿を書いたり…。

 当時は字数制限に苦労した記憶がない。

 それどころかメタボリックな文章だったと思う。

「執筆料を稼ぐ」なんて魂胆はなかったと弁解しておく。


▼盛岡タイムスに『モリオカNOW』を書くようになって2年余り。

 パソコンで原稿を打つ際に気を配るのは、紙面に掲載された時のイメージだ。

 テンプレートを帯状の縦書きに設定した。

 それなのに新聞表記の都合で文字送りや改行位置が変わる。

 …のはチョット残念。


▼774字枠(実質は700字余り)のエッセイだから簡潔に書かないと収まらない。

 そこで重宝するのが短歌である。

 数行分の内容を2行に詠めるし(書き手の思い以上のことまで)読み手に汲みとってもらえると期待もしている。

○文章のメタボを戒め十八字四十三行に綴る日々なり


▼それにしても今朝の「がんばれ」という妻の一言が気になる。

「老健カルモナの施設長を?」

「モリオカNOWの連載を?」

「もしかして…エッセイ本の出版を?」

○妻が言ふ「あなたもがんばって」に団塊世代われの競争心むらむらと湧く


(20201207)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る