第73話 転倒予防手帳

 高齢者は転びやすい。

『2017年度・老人保健健康増進等事業報告書』によると、入所サービスでの事故(258例)の約8割が〈転倒〉関連であったという。


▼高齢者の転倒予防にバリアフリー化がすすめられてきた。

 ところが住民調査によると〈転倒者群・非転倒者群〉ともに「段差アリが69%」で、両群間に差はなかった。

 つまり段差があってもなくても転ぶのである。

 この辺に高齢者の転倒が減らない理由はありそうだ。


▼しかし現実には、転倒を〈事故〉として扱い、その〈責任〉を問う。

 自宅では「しがだねぇな」とあきらめても、病院や介護施設に対しては賠償を求める家族さえあると聞く。

 その対応にリスクマネジメント活動が盛んとなり、行き過ぎるとギクシャクした関係も…。


▼長寿科学総合研究事業転倒予防ガイドライン研究班が作成した『高齢者の転倒予防ガイドライン』を読み返して驚いた。

「高齢者の転倒は疾患であり、事故ではない!」とあるではないか。

「身体的原因による症候群としてとらえ、予防医療に注目し経費を注ごう」とも。


▼残念ながら高齢者の「転倒事故ゼロ」は達成不可能な目標だったのだ。

 まして「転倒の責任が誰にあるか」など不毛な議論である。

 …という認識で使いたいのが、国立長寿医療研究センターの『転倒予防手帳』という優れもの。


▼〈高齢者の転倒リスク予測〉では、転倒スコア6点以上を「要注意」と判断。

・過去一年に転んだことがあれば5点

・歩く速度が遅くなったなら2点

・杖を使っていれば2点

・背中が丸くなってきたら2点

・5種類以上の薬を飲んでいれば2点


▼今日は〈敬老の日〉だ。

 国立長寿医療センターのホームページを御覧あれ。

*『転倒予防手帳』(https://www. ncgg.go.jp/hospital/news/documents/yobotecho2017.pdf)

*『高齢者のための転倒防止セルフチェック』(https://www.ncgg.go.jp/hospital/tento/index.html)


(20200921)

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