第57話 不潔と清潔

 世間で言う「フケツ」とは、見た目のイメージだろう。

 医学用語の「不潔」はウイルスや細菌などが〈いる状態〉で、〈いない状態〉を「清潔」と呼ぶ。

○目に見えぬウイルスさへも「不潔」とふ医学用語は見た目にあらず


▼2020年1月25日(ダイヤモンド・プリンセス号を香港で下船した乗客から)1人の新型コロナウイルス感染者が見つかった。

 その船が3000人以上を乗せて横浜に帰ってきて…。

 こうしてコロナ禍は始まり未だに続いている。


▼陣頭指揮を執った橋本岳(厚労省)副大臣が船内の写真をネット投稿…これが大炎上した。

 問題は、彼が写真を撮っている場所こそ「不潔」と「清潔」の間、グレーゾーンだったのである。

 あの写真を見れば(感染症の専門家でなくても)医療者なら気づいたはず。

「これじゃゾーニングなんて全然うまくいってないだろうな」と。


▼橋本副大臣は、ちゃんとゾーニングできているという証明のつもりで写真を投稿したらしい。

 しかし逆に、危ない場所で写真を撮った結果…。

 ウイルスに汚染していないという保証がなく、14日間の隔離・自己監視となったそうだ。

「生兵法は大怪我の基」という。

「餅は餅屋」とも聞くから、何事につけ専門家の意見をよく聞き(御用学者の甘言に惑わされず)政治判断を下すのがよろしかろう。


▼PPE(個人防護具)姿を見て、二十年ほど前に国立国際医療センターで産科医をしていた頃を思い出した。

 HIV陽性妊婦の帝王切開をする際…針刺し事故などを防ぐ対策のほかにも、汚染されたPPEの外側に触れないよう〈脱ぐ〉ための訓練もあった。


▼医療者にとって「不潔」と「清潔」は健康や命にかかわる概念である。

 それを実現するため、質も量も十分なPPEが提供されなければならない。


(20200525)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る