第49話 COVID

 例年(インフルエンザ流行の)この時期は、高齢者を預かる老健施設にとって気の抜けない日々が続く。

 幸い今までのところ施設内流行はなかったが…。


 さらなる心配は(世界中を駆け巡る)新手の感染症(COVID-19)だ。

○武漢(ウーハン)の火の粉は世界を  飛び交ひて人類(ひと)の愚かさ嘲笑(あざわら)ふがに

○世界では「COVID-19」と呼ばるれど自粛ムードに「孤人」の浮かぶ

○コヴィッドのパンデミックは脅威なり大恐慌の足音さへや


 「ウイルス」と聞けば、危険な感染症を連想する。

 まさに悪役のイメージだ。

 そのため、病原菌(微生物や細菌)の仲間と誤解されがちである。

 その一方で…。

「生物でないものが、どうして感染症を引き起こすのか?」というのも、自然な感覚であろう。

○生物と非生物との狭間にてウイルスめらは生きてゐるとふ


 通常(病原体から自分を守るための)免疫システムにより、体内の「非自己」は排除される。ところが母体(子宮)は(非自己であるはずの)胎児を育み続ける。

 …なんという不思議!

 ここで活躍するのが(胎盤の絨毛を取り囲む)合胞体性栄養膜だ。

 この膜は、酸素や栄養素を胎児側へ通すが、(非自己を攻撃する)リンパ球等は通さない。

「合胞体性栄養膜の形成に関わるタンパク質<シンシチン> は、ヒトのゲノムに潜むウイルスの遺伝子に由来する」と言うから、神秘的でさえある。

○ウイルスの多様性こそ驚きけれ胎児を守るヒーローさへや


 冬季間の乾燥予防として、施設長室の机には超音波式アロマディフューザーを置いている。

 最近のお気に入りは(ヒノキチオール約2%含有の)青森ヒバ油だ。

○気休めに<青森ヒバ油>のアロマ焚きコヴィッド除けの護摩祈祷するなり


(20200330)

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