第48話 スライド今昔

 矢巾町の老健から講演依頼の電話…。

「スライドは使いますか?」

「はい」と答えて要件は完了した。


「スライド」と言えば、昔は幻灯機用〈枠つきポジフィルム〉のことだった。

 幻灯機が液晶プロジェクターに替わり(フィルムが消えても死語にならず)今では〈プレゼンテーションソフト用画像データ〉の意味で使われている。


 そして「スライド」で思い出すのは、半世紀ほど前の新米産科医だったころ…。


〈青の時代〉

 原図をマイクロフィルムで撮影し、ジアゾフィルムに紫外線転写後アンモニア発色させる。

 濃い青色のスライドを作るポイントはコントラストを強く撮影することだ。

 …が(エアコンもない時代の)暗室作業はつらかった。


〈パソコンの時代〉

 プレゼンソフトで、原図は(文字でも図表でも)簡単に作り直せた。

 急ぐ場合なら(原図ではなく)ブラウン管の画面を撮影する。

 …と(画面の中央は膨らみ歪むが)取りあえずスライドは完成だ。

 簡単に作れるとは言え(間違い修正のたびに撮り直しするので)気苦労は続いた。

 講演中でさえ誤字に気づけば「あっ」と…今は笑い話だ。


〈液晶プロジェクターの時代〉

 この頃は、スライド映写が講演の肝。

 パソコンとプロジェクターが接続できないとか…フロッピーディスクが読み込まれないとか…思い出しても冷や汗モノ。

 念のため本物のスライドも用意したが、それが映るまではアドリブだ。


 講演の当日は、手ぶらでケアセンター南昌に向かった。

 ICTの進歩した現在、スライドのデータはネットで送付済みだ。

 吉岡尚文センター長の紹介を受け、スライド〈利用者にも職員にも心地よい施設運営〉を映しながら心地よく講演できた。


 帰りの電車でも、心地よく一言!

「老いたりといえど腕は落ちておらぬ」


(20200323)

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