第42話 感謝の運転仕舞い

 令和元年十二月二十六日、レガシィから御守りをはずし、さらに運転免許証も神棚の脇へおさめて唱えた。

「運転仕舞いに致します」


 その経緯を語れば…。

「晩節を堅持するうえで、高齢者が原因の交通事故は侮れない」と考え、二月末の運転免許証の更新はやめた。

 ついでにレガシィも手放した。

○ハンドルを握りて無事故の半世紀に感謝をしつつ愛車と決別


 翌二十七日は(金曜なので)例年の〈御用納め〉が前倒しになり、令和元年最後の出勤日。

 しかも夜来の雪がかなり積もっている。

 溜息の出るところだが、今朝は鼻歌まじりだ。

 マンション前には迎えの車が待機しているはず。

○もさもさと降り続く雪の朝なれば迎へ車のありがたきかな


 二十歳で運転免許証を取得して以来、ドライブを楽しんだ車は十一台。

 …みな日本車(日産・トヨタ・スバル)だが、カリフォルニアでは左ハンドルのカムリに乗った。

 ウィンカーとワイパーのレバーが左右逆なので、交差点でワイパーを動かしたことも今では笑い話だ。

 週末に家族でロングドライブしたことなど、若き日の素晴らしい思い出としてアルバムに残っている。

 渡米直後に(一夜漬けで)取得したカリフォルニア州のライセンスだって捨てられない。


 〈運転仕舞い〉から一か月がたった。

 ありがたいことに、通勤は〈どこでもドア〉の状態。

 …書斎から(十分後には)カルモナ施設長室にワープ(?)できる。

 爺医としても(感謝しつつ)気持ちよく仕事に全力投入の毎日である。


 もっと良いことに、歩く機会が増えた。

 特に今は雪道なので「足腰の鍛錬になるし、バランス感覚も強化される」と、妻の買い出しに付き合っている。

○雪道も新しき靴にて心地よし、つひ遠回り汗ばみながら


(20200127)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る