第33話 遂にタウン誌

 薄暗い店の奥に段ボール箱。

 そこには「ご自由にお持ちください」の張り紙も。

「お宝発見!」と大量のタウン誌〈街もりおか〉を一冊ずつ番号順に選び出す。

 平成四年の293号から最新号まで全部で32冊もある。

「ちょっと欲張り過ぎかな」と帳場へむかう。


 森九商店の御主人は「どうぞどうぞ」の軽いノリ。

「ありがたや」と竹製の鬼おろしや木製のスプーンなどを購入した。

 東京から遊びに来た娘たちへの土産にしよう。

 末の娘は「お礼の気持ちだから」と大量の〈お宝タウン誌〉をマンションまで運んでくれた。


 このタウン誌と初めて出会ったのは、盛岡に引っ越したころ。

 八幡様へ参拝した帰り道の「そば直利庵」だったはず。

 そば前のお供に丁度良い塩梅で、何よりスマホを相手に飲むより粋だろう。


 月刊〈街もりおか〉は創刊五十周年…日本で三番目の長寿タウン誌だと聞く。

 読み物としてのレベルが高く、「読み物系のタウン誌」と言われてきたらしい。

 その質を維持するため「依頼原稿だけ」とか…敷居は高い。

 ところが「団塊世代の執筆に期待したい」というコメントを発見。

「ひょっとしたら…」と待つこと半年、別なところから声がかかった。


 月刊〈弘前〉に半年間の連載だという。

 地元の医師が交代で書いているらしく、コーナー名は〈医者さまのくりごと〉だと聞いて笑った。

 爺医にぴったりではないか。

 もう書きたくて我慢がならない。

○タウン誌の原稿依頼の締切は三月(みつき)先なれどToDoリストに


 どうせ書くなら、小じゃれた感じで…。

「タイトルに番号数字を組み込もう」と決意。

 六本分を順に〈爺医の一分〉〈人生、二刀流〉〈医家 三種の神器〉〈四足の草鞋〉〈五-七-五-七-七〉〈終の食のすゝめ〉と続ければ…。


「アイデアは完璧だ!」が心配もある。


「読者はソレに気づくかな?」


(20191118)

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