第24話 騎兵第三旅団
〈令和の改新〉を機に青山へ移った。
住めば都…なら、こっそり「青山京」と呼びたい。
マンションのベランダからはジオラマが楽しめる。
巨大な縞王スイカ。
東北道をすべるミニチュアカー。
夜には盛岡市街地に上がる花火も御愛嬌。
○遠街を彩る花火に見とれたり五秒遅れの音ほほゑまし
近所を散歩して気づくのは〈軍都〉だったころの名残り。
盛岡医療センターと改称されたが、元々は衛戍(えいじゅ)病院として発足した歴史ある施設。
県営体育館前に広がる児童公園は、旧陸軍の偕行社(かいこうしゃ)の跡地。あたりには巨木がならび、「宮家お手植え」と彫られた石碑も残る。
○十階のベランダ見下ろすプラタナス 十本がほどにて夏の街おほふ
森永乳業の工場敷地隅に「騎兵第三旅団」の営門を見つけた。
1909年(明治四十二年)に弘前の旧陸軍第八師団から分離編成された、と聞けば津軽衆にも親近感が沸く。
ちなみに〈師団〉とは、司令部を有し独立して作戦する戦略単位で〈旅団〉の上に位するそうだ。
○夕映えのMORINAGA MILKの工場(こうば)裏に騎兵旅団の営門のこる
土曜の早朝、赤レンガ朝市へ出かけた。
騎兵の訓練用に作られた覆馬場が一棟だけ残っている。
この〈覆馬場プラザ〉はスポーツ施設でもある。
もはや蹄の音はしないが、レンガ造りの壁にテニスボールを打つ音が響く。
○夏草に「ラブ・フォーティ!」の声ひびく騎兵旅団の馬場跡にして
夕暮れのベランダに流れる古めかしいメロディ…「春まだ浅く」は、昭和十一年公開の映画〈情熱の詩人啄木〉の伴奏として、石川啄木の詩に古賀政男が作曲したものだとか。
そんな昭和レトロにも四か月ですっかり慣れた。
○日に三たび「春まだ浅く」とメロディが。盛岡の〈時〉はかくもゆったり
(20190826)
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