第9話 吾唯足知

 「門松は冥土の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし」とシニカルな一首。

 一休宗純禅師の作らしい。

 正月に歳を重ねる時代ではないが、団塊世代の一月生まれはインパクトを感じる。


 そんな一休さんよりポジティブに、と医師脳(いしあたま)は詠む。

〇初仕事アップデートす医師脳けさは気持ちも働き盛り


 発想法をコペルニクス的に転回すれば、物事の新しい局面が切り開かれる。


 老健カルモナは、昨年「いわて働き方改革AWARD2018」を受けた。

 個別プロジェクト賞の施設紹介:「利用者にも職員にも心地よい施設運営を」と約束した施設長を中心に、二年前から職員が一丸となり「働き方改革」を推進。

 主な取り組みは、介護業務の分析結果をもとに「介護長」職を新設し業務改善/薬剤関連業務の見直しで安全管理と看護業務改善/各種プロジェクトチームの運用で介護業務への主体的な取り組み/職員同士が感謝を伝える「いいね!賞」で職員の交流拡大、など7件。


 古希を過ぎた今でも、老健施設長として働ける幸せ。

 心身ともに老化は感じるが、頑張らずに生きる知恵「老人力」だけは増したはず、と自負している。


 そして今春は、職場の裏に滝沢中央スマート・インターチェンジも完成する。

「運転免許証の返納は少し先送りしよう」と、あくまでもポジティブ思考。


 弘前へ戻るたび、玄関先に置いてある「知足のつくばい」を見る。

 龍安寺の手水鉢を真似たものだと聞いた。

 真ん中の「口」を囲むように、「吾唯足知」という四文字が刻まれている。

「そもさん?」

「せっぱ!」

 禅の教えらしいが、贅沢を戒める言葉と受け止めている。

「ないものねだり」ではなく、「あるものさがし」をしたい。


 これ以上の贅沢を望んだら…バチがあたるというもの。


(20190128)

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