第20話 魔石をめぐる争いへ 前編
期末試験が無事に終わり、放課後の供給室にも賑わいが戻ってきた。
「どうなることか思いましたが、再試験にならなくてよかったですね、ケイレブくん」
「別に、あんなの楽勝。アイツが教えてくれなくても、余裕だったし」
「余裕と言うわりには、30位以内に入っていなかったが?」
「っうるせぇな! なんでお前ここにいんだよ!」
「僕がどこにいようと僕の勝手だろ」
「クソッ!」
……賑わい以上の喧噪になっている気はするけど。
いつものように事務的に供給を行っていると、廊下が少しざわついていた。どうしたのか、と思っていたら、供給室のドアが開く。ざわつきの原因は理事長だった。珍しい。放課後に訪れることなんて滅多にない。
「理事長! どうかされましたか?」
「うむ。グレース先生にちと用事があってな。じゃが、これだけ供給を待っている生徒がおるなら、また後程……」
「あ、少し待って頂ければ……! 放課後すぐが一番多くて、徐々に減っていくので」
「そうかそうか。それなら、落ち着いたら理事長室に来てくれるかの? 無理に急ごうとせんでええからの」
「は、はい!」
理事長は要件だけ済ませて、帰って行った。また呼び出されてしまった。以前と同じようにまた誰かを紹介されるのだろうか。それとも、今度こそ何かしでかしてしまったのか。心当たりは、ない、はず。
「……では、僕はこれで」
「え、帰るんですか?」
「ええ、先生忙しそうなので。また空いた時間に来ますね」
そう言ってヒューゴくんも帰ってしまった。ケイレブくんもいつの間にかいなくなっていた。供給してなかったけど大丈夫かな。とりあえず今は目の前の生徒たちに供給をしなければ。
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コンコンッ
「失礼します……、」
供給に訪れる生徒が途切れたタイミングで理事長室へ向かった。怒られるようなことは……、施設の休日利用申請に不備があった、とか。そんなことはないとは思うけど、絶対にないとも言い切れない。
そう考えながらノックして理事長室に入ると、そこには理事長だけでなくカナタくんもいた。
「どうしてカナタくんが……?」
「んー……今はまだ内緒っちゅうことで、まずは理事長さんの話聞いてもらっていいですか?」
「そう、ですね……」
あまり腑に落ちてはいないけど、たしかに本題はそっちだろうし。理事長に促されてソファに腰かける。
「……リーディア採石場をご存じかな?」
「たしか……隣国のヴィリヤックとの国境付近にある東部最大の採石場ですよね?」
「うむ。そのリーディア採石場をめぐるヴィリヤックとの争いが先日勃発してな。最初はごく小規模の戦いで終わると思われとったんじゃが、相手の状況が深刻なのか過激化してしまってな……」
「ヴィリヤックとは友好、とまではいかんけど、そう敵対する関係でもないのにちょーっと事情が変わったみたいなんやって」
「へー……。それで、それとわたしになんの関係が……?」
戦争が起きてしまったことは悲しいことだけど、魔石を求めた争いは世界中で大小問わず起きている。ヴィリヤックはアルキュサスに次ぐと言っても過言ではないくらいの大国ではあるが、東部ともなるとこの中心部からは結構な距離がある。国全体の戦争にならない限り、正直、魔法士でないわたしにはあまり関係はない。それなのに、なぜ、理事長はわざわざ呼び出して伝えてきたのだろう。
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