第5話 閑古鳥が鳴く
「おはよー」
「おは……レオ? なんや自分、いつもと雰囲気が違う気がするなぁ」
「なにも変わらないけど……あ」
「ん?」
「多分、HRで先生が説明すると思うけど、すごくいい魔力供給してもらったからかな?」
「魔力供給? 質のいい魔石やったいうこと?」
「いや、そうじゃなくて……って言ってたら先生来たな」
教室のドアががらりと開き先生が中に入ってくる。
いつもと変わらず必要事項だけを淡々と述べたあと、「ああ、それと」と先生は続ける。
「この学園に新しく先生が赴任されたのですが、彼女――グレース先生は魔力をみなさんに供給してくれるので、魔力が少なくなったら特別棟1階の一番西、端っこですね。そこを訪れてみてください」
教室内の生徒は口々に疑問を呟く。魔力を供給とはどういうことなのか、とか、魔石保管庫のような役割なのか、とか。
「先生、質問よろしいでしょうか」
「はい」
「そのグレース先生という方から魔石をもらえる、ということですか?」
「魔石、というか直接魔力をみなさんに注いでくれます」
「女性、ですよね?」
「そうですね。言いたいことはとてもよく分かりますが、実際存在しますし魔力も補給されます。従来通り魔石からの補給もできるので、無理にとは言いませんが、実技授業の後などに体験してみてください。では、これで終わります」
先生が出ていった後の教室は一気に騒がしくなった。おそらくどのクラスでも言われたのだろう。教室の外もどこかざわめいている。
「ど、どういうことや!? 女性が魔力!? ありえへん!」
「分かる。俺も最初はその反応だった」
「というか! なんでレオはもう知っとんねん!」
「理事長に呼ばれて供給のお試しさせられたから」
「なにしれっとした顔で! それで、どうやった!?」
レオポルドと独特な口調の生徒――カナタ・シスイの会話が聞こえてきたのか、他の生徒も周りに集まってくる。
「んー」と顎に手を当てて考えるレオポルドをみんなは静かに見つめる。
「めちゃくちゃ純度が高かった。もう魔石から補給したくなくなるくらい」
「……いやいや、それはないって。なあ?」
「純度高い魔力って言ったらルカ先生くらい? 先生魔法も綺麗だし」
「ルカ先生なんて比じゃなかった。あの純度だったら誰も気持ち悪くならないと思う」
「魔石酔いがないってこと? そんなわけないでしょ」
レオポルドの体験談をもってしても信じてもらえない、それくらい先生から告げられたのはあり得ない出来事だった。おそらく、他のクラスでは体験談すらないため、疑うところまで考えが及ばなかったのだろう。
それは、グレースの勤務開始日から1か月ほど、レオポルド以外誰も供給室を訪れなかったことが物語っていた。
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