終 「いつ見ても慣れないよ……」

 家に帰宅した俺だけど、少しだけ不安が残っていた。


 一ノ瀬さんから明日に話合おうとは言われたものの、もしそれで廃部とかになったらどうすればいいか。

 元はと言えば顧問の先生がちゃんと伝えなかったのが悪いんだけど、もはや後の祭りとしか言いようがない。


 まぁ、もう覚悟するしかない。


 どのような事があれ、美咲を守ると言った以上はやり遂げないと。

 部活の方は一ノ瀬さん次第だろうな。


 そんな事を思いながら翌日の放課後。

 美術部に俺と美咲、一ノ瀬さんが集まった。


 そして、




「大澤君……私をヌードモデルにしてくれる!?」


「「…………はい?」」


 かなり真剣に話し合いをするかと思っていた。

 そのつもりで身構えていたつもりだった。


 しかし俺達を待ち受けていたのは、恥じらいながらもそう言い出す一ノ瀬さんの姿だった。

 ……なして……?


「一ノ瀬さん……美術部の方は……」


「もちろん継続させるわ。ヌードも黙認するつもり。だから私を裸にさせて!!」


「言い方ッ!! いやいや、何で急にそんな事を!? 理由は!?」


「最初、ドア越しにあなた達の話を聞いた時……エロティックな現場が繰り広げているんだと察したわ。もちろん生徒会長として厳格にしようと思ったんだけど……ドアを開けようとする前から濡れちゃって……だからその時には慌てて家に帰ったの……」


 昨日からそうなんだけど、男子がいる前で濡れちゃったとか言うのどうかと思うんだが……。

 しかも一昨日に突入しなかった理由、そういう事かい。


「それでこの気持ちはなんだろうと思って、それを確かめる為に昨日美術部に乗り込んだの。そうして分かったの……私は穂村さんのように産まれたままの姿になりたい、それを絵に描き留められたいって!」


「何故そうなる!?」


「だって仕方ないじゃない! 昨日の穂村さんを見て羨ましいって思っちゃったんだから!!」


「だ、だけど一ノ瀬さんはそれでいいの!? こんな俺の前で裸になるって覚悟ある!?」


「ほ、他の男なら嫌だけど……あなたならいいかなって……。あなたならいきなり襲いかかってこないって信用があるから……」


 信用って……描いている途中に襲ったらそれはそれで大問題だろ……。


「とにかく、私は脱ぎたくて脱ぎたくてたまらないの! お願い! ありのままの私を描いて!!」


「だから言い方!! ってもう脱ぐんかい!!」


 こちらがOKすら出していないのに、一ノ瀬さんが胸元のボタンを開き始めた。

 うわっ……胸でか。しかも黒ブラ……。


「ああズルい!! だったら私も!!」


「お前も何言ってんだよ!?」


 気付けば美咲も服を脱ぎ始めた。

 何に対抗しているって言うんだ!?


 先に一ノ瀬さんを止めようかと思ったけど、もう既に彼女が下着姿になってしまった。

 ……美咲よりも胸が大きい……着痩せるタイプだったんだなぁ……。


 じゃなくて、何を見ているんだ俺は!!


 すぐに目線を逸らすと、何故か一ノ瀬さんから張り上げた声が。


「何顔をそむけているの! そんなんで私を描けると思うの!?」


「描ける描けないの問題じゃないでしょうが!!」


「別にこれをネタに脅すつもりなんてないんだから! お願い、早くして!!」


「だって真也。言われた通りやりなよ」


「お前も言うか!!」


 美咲はタオルを巻いて、とっくにスタンバイモードになっていた。

 一ノ瀬さんも見てみると、同じく自分で用意しただろうタオルを巻いている。


 どちらも恥ずかしそうに顔真っ赤で見つめてきて……くっ、これは断りづらい。

 もうどうにでもなれ……。


「分かったよ……1人ずつやるから。先に一ノ瀬さんな……」


「よろしくね……」


 一ノ瀬さんが白い台の上に座り、そのタオルをはだけさせた。


 ……これは、美咲とは別ベクトルでヤバい。


 ブラから解き放たれた胸は、水風船のように柔らかくたゆんでいる。

 乳首は新鮮なピンク色。


 色白の肌はまるで輝いているかのようで、腰なんかもきゅっと引き締まっている。

 ついでにお尻も大きい。


 鉛筆を握った手が震え始める。

 呼吸も荒くなってしまった。


 だけどここまでしている以上、絵を描かなければ。

 俺は暴走する野生を押さえながら、デッサンを始める事にした。


「じゃあ体育座りしようか……右足を突き出す感じで……顔はこっちに向けてくれれば」


「こうかしら?」


「うん、そう……体勢辛くなったら言って。休憩させるから……」


「ありがとう……優しいのね大澤君って……」


 そうニッコリ微笑んできた一ノ瀬さんに、思わずドキリとする。

 一糸まとわぬ姿だから余計に……。

 

 とにかく俺は、キャンバスボードに鉛筆を走らせる。

 一ノ瀬さんは非常に協力的で、文字通り身をもって応えてくれた。


 しきりに唾を飲み込みながらも、完成までこじつけていく俺……だったが。


「……私、大澤君に身体を描かれてるんだ……。頭……髪……胸……そして……足……」


「……一ノ瀬さん?」


 急に様子がおかしくなったぞ……?

 キャンバスボード越しから覗かせてみると、全身をピンク色に上気させ、潤った瞳をした一ノ瀬さんの姿があった。


「すごい……すごいわ大澤君……まるであなたに全てを奪われた感じ……。もっと描いて……私の全部を隈なく描いて……!!」


「描きにくいっつーの!!」


 何でそこまでエロくなっているんだよ!!

 

 でもそんな彼女の様子に、妙な気分になった自分がいるのが恨めしい。

 クソっ、一ノ瀬さん……俺を惑わせるなよ……!!


「もう、真也ったら!」


「うわっ! 美咲!?」


「何一ノ瀬さんにデレデレしているの! 真也のパートナーは私だからね!」


 頬を膨らませた美咲が、俺の腕に抱き付いてきた。

 胸の感触! 胸の感触が伝わるからやめて!!


「あら穂村さん。もしかして嫉妬しているの、私と大澤君のやり取りに? そんな事で怒るなんてお子様ね」


「だ、誰がお子様ってぇ!? 私は長いこと真也のそばにいるから、真也の事は分かっているんだよ! あと……胸は負けるけど、スタイルは良い方だから!!」


「ほう……だったら競争しましょうよ、どちらが美しく描けれるかどうかを。もっとも勝敗は付いていると思うけど」


「上等じゃない! 真也、一ノ瀬さんのが終わったらすぐに描いて! あと一ノ瀬さんのより綺麗にお願い!」


「無茶言うな!!」


 まさかの事態に俺は困惑するしかなかった。

 果たして今後大丈夫だろうか……。







 そう思いつつも1ヶ月が経った。

 俺は家にある自室にいて、その中で美咲や一ノ瀬さんと対面していた。


「真也ぁ、私を可愛く描いてね♡」


「大澤君、今日もよろしく♡」


 いかにもハートが浮かびそうなエロい表情をしながら、2人が服を脱ぎ始める。

 2人の裸……いつ見ても慣れないよ……。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――――



 ここまで読んで下さってありがとうございます! これにて完結となります!

 当作品は後々に描こうと思っているラブコメの練習みたいなものですので、今後もご期待して下さればと思います!

 

 最後に「面白かった」と思った方は、ぜひとも☆やレビューなどよろしくお願いします!

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腐れ縁の美少女から「私をヌードモデルにして」と言われた俺。~描くのに理性が擦り減るんですがそれは~ ミレニあん @yaranaikasan

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