悪役令嬢に転生したらいきなり求婚されました

詩乃

第1話・悪役令嬢に転生しました

私、沙羅は何も取り柄のないOLだ。


こき使われるように働いて、残業が当たり前のブラック企業。その上、いわゆるお局から罵声の毎日で正直限界だった。でも働かなければ生きていけない世の中。


両親とは疎遠。友人なんていない為、頼る人もいない。どうすればいいか分からなかった。

そして今日もブラック企業に勤めて、帰路につこうとした時だった。



「沙羅さん」


「……なんでしょうか」



声をかけてきたのは、同期の一ノ瀬さんだ。

私がお局から罵声を言われたりしている所を唯一止めてくれるめてくれる優しい男性。



「一緒に帰りませんか?」


「………」



なんで?

一ノ瀬さんは会社の女性からものすごくモテる人気の人だ。何も取り柄のない私に話しかけるなんてどうかしてる。



「僕、貴女のことをもっと知りたいんです」


「…はぁ(唐突だな)」


「沙羅さんのこと、気にかけてました」


「……(知ってる)」


「気にかける度にもっと知りたいってなったんです。沙羅さんが僕のこと頼ってくれたらって」


「…」


「だから、良かったら僕と」


「ごめんなさい。私、もう帰りますね」


「えっ」



私は一ノ瀬さんに別れを告げ、駅のホームへと向かった。

雰囲気的にそうだろうなと思ったけど、まさか当たるなんてね



「私と付き合ってメリットなんてないでしょ」



そう呟いた時だった。


横断歩道の信号は青信号のはずなのに、信号無視してきた車に跳ねられた。


とても強い衝撃だった。

私は頭を強く打ってしまい意識を失った。



………

……



「ーー、」



誰かの声が聞こえる。



「大丈夫か?」



目を開けると見覚えのないパーティ会場らしき所だった。

……なにこれ。



「急に目を閉じるから何事かと思った」



目の前にいる男性は心配そうに私を見ている

えっと、おそらく格好からして王子とかかな?



「サラ=ウィリアム、返事を聞かせてくれないか?」



待ってなんの返事?

それよりもサラ=ウィリアム?って私のこと?



「どうした?そんな顔をして」


「あの、……なんの返事でしょうか?」


「………」



そんな驚いた顔しないでほしい。

なんの返事か分からないと、返事できないから



「……求婚を申し込んだんだ」


「…求婚?」


「あぁ。君は令嬢の中では1番位が高い公爵令嬢。その上、優秀な人材だ。求婚をしても申し分ないだろう?」



いやいやいやいや、待って??

なに、公爵令嬢って。小説の中でしか見たことない単語だよ。え、異世界転生したの私?

とりあえず状況を整理したい。



「……ごめんなさい。応えられません」


「…それは何故か聞いても?」


「………」



いきなり求婚されても困るだけだよ。

王子らしき人に言われても、名前や素性が分からないのに承諾するわけない。



「残念だったね、兄さん」


「……レイ」


「………」



今度は誰?また新しい人が出てきた



「サラ様、それなら僕と婚約しませんか?」


「え……」


「レイ、お前っ」


「兄さんは黙っててよ。断られたんだからさ」


「…っ」



待って。意味が分からない。

この状況から脱却したい



「レイ=クリフト王子、抜け駆けは良くないな」



なんかまた現れたんだけど



「アレン=フォーリア」


「サラ=ウィリアム嬢、私と婚約していただけませんか?」


「…………」



なんでこうなる?

目を覚ましたら、いきなり求婚されることなんてないでしょ?!自分の顔も分からないのに、無理に決まってる。とりあえず断ろう



「ごめんなさい、お受けすることは出来ません」


「どうしても、ですか?」


「あなた方のこと、よく知らないので」


『…?!』



私がそう言うと、周りがザワついた

え、何?なんか言っちゃいけなかった?



「サラ、俺の名前は?」


「……分からないです」


「っ?!」


「これはまずいな……」


「サラ=ウィリアム嬢、医者に診てもらいましょう」


「それがいい」


「兄さん…」


「サラ、一度屋敷に戻って医者に診てもらってくれ」


「…分かりました」



屋敷に戻ることになった私はパーティ会場を後にした


帰宅するとメイドさんが話しかけてきた



「サラお嬢様、お帰りなさいませ」


「……ただいま、」


「サラお嬢様?」



メイドさんの名前も分からない



「あの、部屋に案内してくれませんか?」


「?!……か…かしこまりました」



部屋に案内してもらい、1人になった



「まず、状況を整理しよう」



この今の自分の容姿を確認する為に鏡の前に立った



「青い瞳にふんわりと巻いた金髪。綺麗なピンク色をした唇…」



まさに美人枠。

前世の私とは比べ物にならない


次はこの公爵令嬢の頭の中を覗いてみよう

なにか手がかりがあるかもしれない。



「…………」



この世界はウィスタリアで、私は公爵令嬢で、ウィスタリアにあるローカルト学園で生活を送っていたと。

だいぶ分かったけど、この世界がどんな物語なのかさっぱり分からない。異世界転生なんて現実世界ではありふれていたけど、読んだことないからどうなるか予測がつかない。

しかも一部から悪役令嬢と言われているのに王子たちから求婚されたんだけど。


「…転生して早々詰んだ」



神様、私はどうすればいいんですか?!




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