第58話 僕らが生まれて来た目的は……

 僕にとって、フォミィという女性は……

 本当に、このどうしようもなく回りくどくて、難儀なくらいに、面倒臭い性格に感じさせられてしまうが……


 だけど、そんな感じのフォミィだからこそ、今の僕にとっては、いっそう愛しく思えてくるんだ!


 初めて逢った時の、あの気難しくて手強かった、フォミィ……


 あの時の彼女からは考えられないくらいに、こんなに僕に打ち解けてくれて、懸命に彼女の言葉で想いを伝えてくれた!


 それなのに、僕が逃げてばかりで、そのフォミィの想いに応えられずにいられるわけなんてない!


「実現しましょう! 僕らで、この能力者の世界の垣根を超えて行きましょう!」


 僕が、フォミィの両手を取って、そう宣言した瞬間だった!

 パッと、脳裏に鮮明なビジョンが浮かんで来た!


 そのビジョンは、僕とフォミィが一緒に、一般人の男女を沢山カップリングしていた!


 幸せそうなカップル達の笑顔、そして、もちろん、僕やフォミィの顔からも笑みが溢れていた……


 これは……?


 もしかして、僕とフォミィが生まれて来た目的なのだろうか?


 自分は、見せる方の立場だったから、生まれて来た目的を見せられた人々の気持ちになった事なんて無かったが……

 こんなにも、自分の目的意識が満たされると、恍惚的なくらい幸せな状態になるものだったとは!


 何よりも、自分のこれからの人生のビジョンには、いつも傍らにフォミィがいてくれるんだ!


 これ以上の幸せなんか、今の僕にとって有るだろうか?


 これは、僕だけが見せられていた……?

 同時に、フォミィも見たいたのだろうか?


 そんな疑問は愚問だったようで、次の瞬間には、フォミィの瞳から涙が溢れた。


「……ごめんなさい、嬉し過ぎて。ずっと、ラーニさんに避けられていたから、私、てっきり、嫌われているのかと思っていた……」


 フォミィの言葉はビジョンと共に、僕の心の琴線に触れまくり、僕は、泣いている彼女以上に、愛想尽かされそうなほどの号泣をしていた。


「謝らないで欲しい。謝らなければいけないのは、僕の方だよ。自分は、結婚相手の候補から除外されていると思っていたから。つい、意固地になって、ここでの生活が慣れていないから僕に頼ろうとする君を遠ざけてしまって、申し訳無かった! これからは、その分も償っていくから……」


「ええ……そう約束して下さい! ありがとう、ラーニさん……」


「ラーニでいいよ、敬語も止める事にしよう。僕も、フォミィと呼んでいい?」


 敬語とさん付けを止める提案に対し、フォミィは頬染めしながら頷いた。


 今までは、ずっと一般人の幸せに貢献するだけで、自分とは無縁の世界の出来事だと割り切って仕事を続けて来た。


 その無機質な日々に、フォミィが終止符を打ってくれた!


 それからというもの、そんな僕らの様子を微笑ましく捉えてくれた、一般人と化していた隠れ女性能力者達が、次々に能力者としてカミングアウトし出した!


 それは、とても有り難い事で……

 今まで、女性能力者が圧倒的優位に立っていた能力者の男女バランスが、彼女らがカミングアウトした事により均等化し、従来の規則が崩壊した!

 

 結果、僕ら能力者達も、晴れて自由恋愛が可能になった!!

 

 僕とフォミィは、能力者社会で自由恋愛の先頭を切った夫婦として、今もなお称賛され続け、能力者男性達から感謝される存在となった!


 そして、もちろん、フォミィと僕は、一般人からも羨望されるほど、公私ともに仲睦まじく生活している。


 

           【 仮 完 】


(只今応募中コンテストの規定が6万字なので、ひとまず6万字内で仮に終わらせますが、1月の最終選考落選の時点で、また、10万字まで書き足す予定です。)


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生まれる前に決めて来た ゆりえる @yurieru

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