第4話 中川達也の場合

 僕のかあさんは貧乏だ。僕を育てられもしないくせに産んだ。

 今は孤児院に預けられている。

 このまま引き取りに来なければ18歳でここを出なくてはならない。


 孤児院の子供たちは何か資格を取って働こうと一生懸命だ。

 俺は何をしたいのかわからずにいた。


 学校が終わってから公園に行くことが増えた。

 何になればいいのだろう?


 孤児院の仲間たちは料理人、介護士、看護師。

 そのほか国家資格と呼ばれる資格も検討している人もいる。


 俺はどうしたいんだろうか?


 悩む。

 けれども悩んでいる暇もないかもしれない。

 福祉系に行けば、低い収入かもしれない。

 けれど、ほかにできることがあるのか。

 

 料理人ならどの分野でもまだ需要があるのではないか。

 悩む。

 どこで何をするにせよキツイ労働であることには変わりない。


 何をするのか何を取ればいいのか悩む。

 幸せな家庭が多い。

 少し特殊な境遇の俺たちはなんとなくみんなの輪から外れていった。

 俺には心配してくれる人は少ない。

 学校がある日は良い。余計なことを考えなくてすむから。

 日曜日と年に数回はある祝い事が苦痛だった。

 例えば誕生日、お盆、クリスマス、お年玉。

 俺には変える場所もない。

 施設の人くらいだ。誕生祝いもお年玉もない。


 同じような悩みと孤独を抱える恵美と由美子は親友になった。

 相手のことが何でもわかる親友。

 楽しいことも困ったことも勝っているところも劣っているところも。

 性別は違えど、少し陰のある子であろうとも友達になれてうれしかったんだ。

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提供された子供たち 朝香るか @kouhi-sairin

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