第3話 古手川由美子の場合

 私のうち、古手川家は200年続いているといわれる家系らしい。


 私の両親は仲がいい。


 私とはというと正直微妙。


 お母さんとは仲がいい。

 でもお父さんは怖いの。


 私が養子だからっていうの。淋しいよね。


 血のつながりがないって大人の人の集まりで

 伯父さんって人に言われたんだ。


 ショックだったなぁ。

 誰もかばってくれなくて、言い返してもくれなくて。


 お母さんはうつむくばかりでね。

 そんなに私っていらない存在なのかなって。


 美味しいごはんとかきれいな洋服とかお母さんはしてくれるけど、

 お父さんはこわいから近寄りたくないんだ。


 礼儀がっていないとかマナーがいけないとかいっつも怒られるの。


 そんなに幼稚園や学校とも違いなようにしているのに、何か駄目みたいなんだよ。


「ねぇ、お母さん。私っていらない子なのかなぁ?」

「望んだから産んだのよ。二度とそんなことを言わないで頂戴」


「はい」


 それにしては私のことよりも父親の機嫌を取ることのほうが必死のように感じる。

 学校が終わったらお習字、英語、バレエのレッスン。


 正直どれもやりたくない。

 でも行儀良くこなさないとお父さんに怒られるから。


 必死にこなしたけれど、同級生の無邪気に遊んでいる様子が気になる。

 いいなと思うけれど、それすら許されないのだろうなと思う。


 お淑やかに礼儀正しくいないといけないの。

 非行に走るなんてとんでもない。


 どこにいても息苦しい現状にため息をついた。

 街を歩けば「古手川の娘さん」

「お父さんによろしくね」などなど私から見ると知らない人たちから声がかかる。



 扱いが悪いが、

 血縁とか家とかそういう重くて

 古臭いことをかが得ることになるなんて考えもしなかった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る