第5話 最終話だよ
回答は保留にしました。それだけでパンフレットの派閥から狙われないらしいから。
あと技術供与を受けました。
現在の世界から逃げて地獄を回避しようとするやつを失敗させる技術です。
技術差がえぐすぎました。個人で世界一つをカバーできるものを手作りできました。両手がないのに。
叡智も行き過ぎると安いお守りにしか見えない。
そんな私ですが十日程牛車に揺られてたらい回されて小さな町のお座りさんをやらせていただいてます。
開放された都市のやつってことで、今は同じ両手両足首がないやつらにも同情されてなんとか生きてます。
同族を調理スキルするやつの話も聞きません。調理スキルの制限は地獄にはいらないかもね。
探ると忌避感があるみたい。手首足首なくされてもしっかりとした価値観を持っているようです。
そして今は、異世界に召喚されています。
やってるとわかりますけど、この道汚いな。なんか使いきったサンドペーパーを丸めた?
あ、されました。召喚です。到着しました。
変な模様の上にいて、なんかこれはスキルや魔法を封じるものみたいですね。地獄をいじれません。
部屋はコンクリートに見えます。コンクリートだなこれ。懐かしい。
「」
なんか聞こえてきます。歌か魔封じか、ただ電話口の待機音声か。分かんなすぎて、かぎかっこの中に文字を入れるのを諦めてしまいました。
あちらとしては何したいんだろ。
「しょんべんしていい?」
「」
はは、なんかゆうとる。さっきのと差がわからんから感情も読み取れん。本当に音楽かもしれん。
前もってパンフレット自分に聞いたところ、呼び出された場合洗脳して地獄研究させるとか、コピー作って地獄を作るスキルを調べるとか、単純に資源として食用に使われたりするらしいです。
食用なら調理スキル活躍できそうだ。異世界人、異星人の御口に合うようにカスタマイズされてないか。
まあそんなこと考えている内はじまりました。頭に言葉が貼りつきます。
生物たち無生物たちの知性の素にもよりますがきちんと翻訳されてるはずです。
『はじめまして。私にとって新しい世界の生物たち、無生物たち。地獄の概念がこれから重複しなければいいのですが、この世界に死後の地獄というものを作成しました』
パンフレット自分からの技術、そして知識はとてもためになるものでした。
異世界があること。誘拐されることがあること。強力なスキルや魔法封じがあること。
そこまで聞いていたらそりゃ対策も打ちます。これは過去の地獄をつくれる被害者には不可能だったものです。
そして対策をしたので、次の異世界転移を私を対象とするものにかえました。
『地獄へは亡くなったり、私が来てほしいと思ったときに入れます。地獄は刑罰みたいなもので、私が設定したことをしなければ死後苦痛なく終われます』
これは嘘で、守っててもみんな地獄に行きます。
『では規律ですが、これは家族、大切な人たち単位です。一人でも破れば巻き込みです。地獄のことを誰にも伝えないこと』
他世界にバレないように。
『これは世界単位です。ここと私の世界間のつながりを塞がないこと』
魂を浄化してコロコロにするシステム、いくらコロコロがあってもいい気がしたので、他世界から何かの魂を収奪することにしました。
穴を塞がれると私みたいに魂だけで異世界に行くことができなくなってしまいます。
だから塞がないでね。
『最後に私を無事に戻すこと。それでは地獄を体験してください。生まれたての赤ちゃんも対象にしたので、巻きこまれた他の銀河の生物たちもがんばって私を戻してくださいね。では素数秒ごとに一月分の私の考えた灼熱地獄スタート。百秒を超えたら五秒ごとにします。時間の単位はすべてこちら単位です』
スキルや魔法を封じるここから異世界転移はできるのかな。どこかに移動する必要ある?車椅子ありませんか?
数秒たっても叫びが聞こえてこない。
うまくいかなかったのか、防音なのか。ハラハラする。
寝転んだまましょんべんをして待とう。
この世界のこの星の空も青いのかな。
地獄の空は青くないからびっくりするかもな。
一日たっても音沙汰がなくて、心配しています。
『私をさらって十日目です。今日のランダム地獄は道化師刑地獄です。一分に一月間こっけいに笑わせてください。しないと今後一生不快にさせます』
十日目です。
もしかして誰も読んでないのに私が勝手に来ちゃった?いや、こんな地獄スキルだけピンポイントに封じられてそれはないか。
他にも想像していたのですが、もしかしてこの世界って私の世界から毎秒一万人くらいさらってない?そして誰が地獄作ったかわからなくて困ってない?
実は宇宙空間の部屋に転移させて自爆してもいいようにしてない?
疑問があふれでてくる。
ここで俺が地獄を作ったんだ帰し
てくれというのは簡単ですが、それ、もしかして他の人もやってない?
なんか今からするのも怪しいな。
というか他の人も十日も放置されたら普通に残ってる生物たちも亡くなってない?
私は自弁できますけど。水筒や弁当は金なくて用意できず、まあ調理スキル使ってあれをって意味の自弁です。調理スキル持ちが長生きするのがわかるね。
コンクリートは水を吸わないから助かった。
疑問だらけで退屈で、床の変な模様とか私なら解析されないようにダミーにしとくなとか思ってたらなんか光りました。
順番きた!よかった!
戻った場所はいつものござで、時間軸も多分そのまま。お土産なし。
あの世界結局何だったんだ。
地獄の設定画面を見てみると、他世界に地獄を設定できるようになっていた。
さっきいた世界と、五百万くらいの世界の個人を一括設定。亡くなったらこっちに来てもらうように。
こちらの規律を他文化に押し付けるべきじゃない。
この別世界の五百万は意味ないけど地獄体験が続くから慌ててやったのかな。
地獄をのぞくと、あの世界で亡くなった三十万くらいのこの世界の魂がこちらの世界に戻ってきている。
もう釣られるのは私だけに設定しておこう。
あの世界は間断なく地獄体験が続く。
終わって一息ついたころ、また呼ばれる。
「パンフレットさん。加盟はしないけど、加盟したとこは地獄から解放でいい?敵対せずにいたいし。さらったらやるけど。まあ第三極ってことで」
「提案しておきます」
加盟の技術で召喚を少し遅らせている。
その時間で地獄スキルがオートで働く。本体があちらに飛ぶ前には、先行した地獄をつくるスキルがつながった穴を通ってあちらに地獄が生まれているはずだ。
事前に知っておけばできる、なんかが封じられることへの対策だ。
自画自賛だが、いいシステムだ。
調理スキルは他にも魂の汚れをきれいにできるし、質感や粘度も変えられる。輪廻の掃除に便利。
何より地獄スキルを調理して栄養たっぷりの都合のいい料理にアップデートできる。おいしく食べれる。食べてはいけない。
何度か異世界旅をしてるが基本退屈なので他の生物無生物で中継して地獄を広められないか調理してみた。
できた。
地獄体験に来てもらうとき、水洗いに一手間かけたらできた。できました。
人が大切にしている魂とか能力とか、塩水につけたらそれだけで料理になりますよ
。
調理に苦手意識を持っている人はそんな難しいことじゃないと思って頂けたらなと思います。
パンフレットさんを通じて加盟拒否をしたことを公開してもらうと誘拐がひっきりなしになりました。
ぼこぼこ世界間の穴が開いて、様々な世界に地獄が誕生しました。
中には帰れない方々もいらっしゃいました。さすがにそうした方々は魂をキレイにしたりするだけで苦痛なく終わらせています。
私の代わりに行ってもらったのでなんかすまないなって。元々地獄で苦痛を味わう必要は調理スキルのおかげでないわけですからね。
仇討ちとして魂だけで帰ってきた場合は十秒ごとの地獄体験が続きます。
そこの世界間の穴から魂、無生物からも出るやつがあるからよくわからないけど一応魂がこちらにたくさん流出していますし効いてるでしょう。
困るのが世界間の穴を閉じられることですが、今のとこは入るとき魂が道をキレイにくっきりとしているので閉じられてません。
責任者として誇れることです。
それにしても億を超える世界から魂が入ってくると、神様びっくりしてますね。
輪廻の道に扉があるのですが、そこから神様が様子見に出てこようとしたけど魂に押されて扉が開かなくて困っているみたいです。
輪廻の道は一世界サイズですからね。億世界の魂が来るとギチギチです。
ギチギチ過ぎて魂の圧縮合体と分解が起きてて、でもそれで何が起きるのかわかってません。
さらに他世界との魂との圧縮合体と圧縮分解の繰り返して均一化されたら何が起きるの?ご当地で差あるのに。
でもまあ魂はいくらあってもいいもんですからね。
あとこれも平気なのかなってのもあって、世界間のつながりの穴が空きすぎたらどうなるの?
すでに小さな通り穴が集合した大穴ができています。
外からは複数の穴、しかし内からは一つの大穴。こちらから一つになった穴に入るときどこに出る?何次元にあるのか知らないけど、高次ではミクロとマクロが一致しないのは普通のことなんだろうか。
ということらが気がかりです。
聞けばいい。
「パンフレットさんは魂の異常流出と世界間の穴の異常増加で何が起きると思います?」
「調べるためにこの世界と繋がりたい文明はもうありませんよ。わかりません」
「そっか。パンフレットさんには地獄ないから安心してね。私にはあるけど」
調理されたものはいずれ賞味期限がくる。地獄も加工された魂もいずれ腐る、のかな?
今日も輪廻はキレイで魂が大量のコロコロになって道を塞いでいる。
神様がノックより大きな音を立てて扉を壊そうとしている。
流れで扉にくっついている魂たちがぷるぷると揺れて衝撃を吸収している。
私はそろそろ天国に偽装された地獄でも作ろうかと思いたった。
美味しい料理を食べられるとかどうだろう。食べたら輪廻に並んでもらう。
噴水の水飲み場まで三十分。今から行けば朝の混雑が終わっている時間だ。
調理スキル持ちのこの体が一度もしていない、人に料理を振る舞う場面を想像する。
どんな場所で、家具は、食器は、フルコースはどんなものがいいか。
私は壁に身を寄りかからせ、脇に力を入れ杖を支えにして立ち上がった。
調理スキルが禁止されてもしかたない @euaa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。調理スキルが禁止されてもしかたないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます