トラック5 閑話 先輩が来るまでの桜子ちゃん
ガラガラと少し古びた部室の扉を開ける。
建付けが悪いせいだろう、扉は少し斜めになっている、柄にもなく、走ってきたせいか、少しだけ暑い。本来ならだいたい16時10分ころに部室に着くのだが、どうも緊張して、いてもたってもいられずとりあえずホームルームが終わって図書館に寄る時間をやめてめちゃくちゃ走ってきた。ま、まあ先輩を待たせる訳には行かないし? べ、別に楽しみにしてたわけとかではな、ないけどぉ。
「とりあえず、先輩がいつも聞いてるASMR作品を聞いておこう」
先輩がどんなことをされたり言われたりするのが好きなのか調べるために、昨日買ってみた、
『素直じゃない後輩のあまあま耳かき』
一応昨日聞いて頭には入っているが、ある意味落ち着きたい時に聞くのも正解だと思う。
耳かきの音と後輩ちゃんの声が流れ始める。
『先輩、すごい顔、とろけてますよ?』
『ふふっ、きもちわるーいんだ』
『でも、可愛い』
こ、これをせ、せ、せせ、先輩に言えばきっと私にイチコロのはず......
「は、恥ずかしいなぁ」
「で、でもれ、練習し、しないとだよね!」
先輩が太ももに顔を乗せていることを想像して、さっきのセリフを言う。
「せ、せ、先輩、す、すごい顔、とろけてますよ?」
「ふふっ、き......き、きき、きもちわるーいんだ」
「で、でも、もう無理ぃ、は、恥ずかしいぃ」
な、なんなのこれ録ってる声優の人は恥ずかしくないの!? 不特定多数の人に向けてるからとか? 待ってめちゃくちゃ恥ずかしい。
「うわ、私顔真っ赤だ......」
頬に手を当てると確実に熱を感じる。それすなわち、今先輩にこられたらめちゃくちゃ意識してると先輩に思わせてしまい、余計緊張させてしまう可能性大だ、それは避けたい。
足音が聞こえ、扉が開かれる。私たちの部活に顧問はいない。だから扉が開いたということは......
「おおおお......おーす、ちょっと遅くなってすまん」
あ......やばい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます