トラック4 はははははっ......初めての耳かき

翌日、放課後にて、いつものように部室に行こうとする。

「あ、そういや悠、どうなったんだよ昨日のやつ」

竜二に呼び止められるなんというかタイミングが悪いやつだ。良い奴ではある。

「あー話すと長くなるんだがまた後で良いか?」

もちろん俺は早くコンマ1秒でも早く部室に着いて飯を食って耳かきをしてもらいたいのでこんなむさいゴリラと話す時間はない。もちろん竜二は良い奴なのでここで引き下がってくれる。

「おいおい、昨日の俺の時間取っといてそれは酷くないか? 俺も気になってたんだよ」

前言撤回、こいつはカスだ。無視してもう行こう、ん? うーーん、全然動けないなぁ、なんでだ。あー肩が痛い、すごい痛い、なんか最近痛いこと多くないかなぁ、てか肩掴んでやがるなあのゴリラ。

「わかった、話す、話すからよく聞けよ」

やっと解放されたのでとりあえず事の顛末を話す。1分で。

「てわけでおれは今から耳かきをされに行かな行かんのだお前と過ごしてる時間はない」

「あ、付き合ってねえんだ」

デリカシーのないゴリラはとりあえず殴っといた、拳が痛い。なんでだよ。

「おおおお......おーす、ちょっと遅くなってすまん」

「こ、ここんにちは先輩きょ、今日はい、い、良い天気ですね」

今日は曇りだ。なんなら雨が降るとか言ってたような。いや、気分は日本晴れなんだが。

改まって会うとめちゃくちゃ緊張するし、なんかやっぱりすげー可愛く見えるから目が合わせられない。

「あ、あーーな、なんかぁ、ね、眠たいなぁ、ね、きょ、今日もこ......ここ............ここで寝ようかなぁ」

あ、やっべ、すっごい声上擦った、何今の声、おしろい塗って叫ぶあの人やん。

「ふふっ、先輩、緊張しすぎ、なんか先輩見てたら緊張解けちゃいました」

「お、おぉ、それは良かった」

桜子の笑い声を聞き、俺も少しだけ緊張が和らいだ気がする。

「それじゃあ、どうやってしましょっか、耳かき」

「じゃ、じゃあ、あそこで......」

長い椅子に座った桜子の太ももに頭を埋める。

屋上で寝た時も思ったが、めちゃくちゃ柔けえぇ、すげえぜ女の子の太もも。

「ちょっと......頬すり、もぅ、それじゃあ耳かき始められませんよ」

「あ、ごめんごめん、お、お願いします」

「はい、じゃあ行きますよ」

意識が覚醒している状態でしてもらうのは始めてだ。普段自分でも耳かきなんてしないのに、人にやってもらうって改めてみるとすごいな。

まあ、ここは何も考えずに桜子の耳かきを楽しもうかな

「もう、ほら、先輩落ち着いて」

先輩の体は緊張からか、小刻みに震えている。

なんか、子犬みたいで可愛い。

「それじゃ、耳かき始めますね」

先輩は目を閉じて、私に体を預ける。

最初はゆっくりと耳の中に綿棒を入れる。

先輩の耳の中をかき分けるように綿棒が入っていく。雑にならないように、綿棒を動かす。

「......んっ、ど、どうですか? 私の耳かき、気持ち良いです......か?」

先輩は口に出して答えてはくれないが、気持ちよさそうな顔でにやけていた。

「先輩、顔、すごいにやけてますよ」

綿棒を耳から抜き取り、耳元に口を近づける。

「そんなに無防備な姿、後輩の女の子に見せていいんですか?」

耳元でささやくと、先輩は相変わらず顔をにやけさせていて、自分がここまでこの人を蕩けさせれたことがとても嬉しかった。

「ふふっ、きもちわるーい......ふー」

「ひゃあっ!」

不意打ちで息を吹きかけると、ビクンビクンと体を跳ねさせている。

「ビクンビクンって、そんな素直に反応しちゃうと、これが僕の弱点だって教えてるみたいですよ?」

からかいすぎたのか、先輩は顔を真っ赤にさせて黙ってしまった。

「あー、ごめんなさい。それじゃ耳かき続きやりますね」

そこからゆっくりと時間かけ、片耳の掃除が終わった。

「せんぱ――あぁ、ふふっ......」

先輩はすぅすぅ、と気持ちよさそうに寝息を立てては眠っていた。

「それだけ気持ちよかったのかな、嬉しい」

それから下校時間まで先輩を太ももに載せながら、時折頭を撫でては、本を読んで過ごした。

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