「私」という旅人が見た世界の風景ひとつひとつを、静謐に、けれど圧倒的な描写をもって綴る短編連作。一話一話は短いながら、無駄無く洗練された文章と、読者の想像力をかき立てる魅力的な設定の数々に呑み込まれ、世界の中にどっぷりと浸ることができます。
旅人が目にする光景一つ一つは、ただ優しく美しいだけではなく、時に厳しく、時に恐ろしくもありますが、けれどその全てに、世界そのものが持つ息吹が感じられて、自分もその中に入り込んでみたいような思いに駆られます。
文章を読むだけでその光景が色鮮やかに思い浮かべられる、ずっと大事にされてきた古い画集を一頁一頁めくっているような気分になれる素敵な作品です。
とある旅人の目を通して語られる、とある世界の話の欠片。
それは時に優しく、時に激しく。また、時には不思議な情景を我々に見せてくれる。
一話一話は短いが、凝縮された文章は濃厚で、次へ進むたびにくるくると景色を変える様はまるで万華鏡のようでもある。
一話だけでもどっぷりと世界観に浸かれる様といい、その後の世界を空想できる余韻といい、一枚の荘厳な絵を見た後にも似た気持ちよさがあるのも楽しい。
硝子の森に交易都市、蒐集されし図書の館。虹の橋を渡って次はどこへ向かおうか。
是非、レビューを読んだ皆様も捲りめく異世界への旅に出てほしく思う。
ー**読了したので追記**ー
己の求める世界の悉くを見た旅人が、最後に記した愛おしく、美しい景色。
それを読んだ時、我々はキャッチコピーの「世界は、希望で満ちている」の意味を悟るのだろう。